「妖精的日常生活」シリーズ
Fairy Whiteday
〜恋はふにゃらら〜
作:ノイン
画:地駆鴉
*「妖精的日常生活」シリーズは、ジャージレッドさんの同名作品から生まれたシェアワールドです。
*「妖精的日常生活」の公式設定等は http://www.keddy.ne.jp/~jersey-r/fairy_life_top.html
または ジャージレッドさん までお願いいたします。
正直、俺は驚いた。えっ何がって? 俺の彼女、名前を
「良平く〜ん、一緒に帰ろう」
ふよふよと飛んできて、俺の肩に止まる妖精が一人、この子がさっき話した、花ちゃん。そりゃもう、すっげ〜かわいいんだよな。俺は別に妖精フェチってわけじゃないけど、本当に可愛い。 あっ言っとくけど、花ちゃんだから、可愛いと思うんだからな。いくら外見が可愛くても、中身が大事なんだよ。
ちなみに俺の名前は、
「花ちゃん、今日さ、どっか行かない?」
「あ、うん、いいよ」
笑顔いっぱいって感じで、花ちゃんが答えた。うわぁっ強烈ぅ
「どうしたの、良平くん、顔がまっかだよ?」
「いっいや、なんでもないよ、そう、本当になんでもない」
花ちゃんが可愛くて、真っ赤になったなんて言えるわけないだろ、あ〜恥ずかしい。
花ちゃんは小首をかしげて、どうしたのかなぁって顔してたけど、これがまた可愛いんだよな。うっやべっ、俺壊れ気味かも…
「じゃあ、いつものように、ひまわり公園で待ってる」
俺は短くそう言うのがやっとだった。
だめだ、好きな子の前じゃ、緊張しちゃうんだよな〜、俺って青いぜ…
「ちょっとぉ、待ってよ…良平君。どこに行くのか決めてないよ」
うわ〜だせ〜…もうだめだな俺、自分を『あぼーん』したい…
えっ、『あぼーん』の意味がわからない? 2chを知ってればわかるんだが…まあいい、今回は特別に教えちゃる、つまりは消えたいってことさ。
そんなわけで(どんなわけだ)、俺は死ぬほど焦ってたんだな、な〜んも考えないで
「ゲーセン行こう!!」
って言ってしまった。
いや〜な間があった
あああ…やっちまった。花ちゃんが悲しそうな顔でこっちを見てる。
「良平君、私、妖精だから、そこにはちょっと…」
そう、妖精は電磁波を出す機械に弱いんだ。ゲーセンも場合によってはヤバイに決まってる。いやそれ以前に妖精のサイズでゲームができるわけがない。俺は……バカだ。
「ごめん…」
「ううん、私が妖精になっちゃったのが悪いんだし、ごめんね良平君、一緒にゲームしたかったね…」
花ちゃんは、精一杯って感じで笑って
それがとっても痛々しくて
俺は自分の馬鹿さ加減を呪った。
だめだ、俺がここでなんとかしないと!!
「じゃあさ、水族館に行こう、イルカショーがあるんだってよ」
「ほんと!? うわぁ見たいな、一緒に行こうね」
よっしゃ、なんとか名誉挽回、俺はうきうきしながら家路についたのであります。
もしかして俺って単純?
「良平、どこへ行くのですか?」
これ一応、俺の母さん、名前は
ところで、さっきの母さんの台詞でわかると思うけど、母さんって、いい所のお嬢様だったんだよな。おかげでいろいろと厳しいし、勉強しろってうるさいし。俺としては地球上で最も苦手な生物だ。
俺はつつつーと流れでる汗を感じながら、母さんのほうを振り返る
「母さん、実は花ちゃんと一緒に水族館に行こうと思ったんだ」
どきどき
どきどき
怖えぇぇ、無表情に近い顔だから、余計に怖い。はっきり言えば、某クイズ番組よりも怖い、この独特の間!!
「そうですか、気をつけて行ってらっしゃい」
あれ?
俺の予想に反して、母さんは意外にあっさり、俺が遊びに行くのを了承してくれた。どうしたんだろう? まあいいや。ともかく、早く待ち合わせ場所に行かなければ。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
母さんの言葉を背中で聞きながら、俺は勢いよく家を飛び出した。と言っても俺は人間だから、本当に飛んでいるわけではないけどな。
時々俺は思う…もしも俺も妖精だったらって、花ちゃんと一緒に空を飛んで、花ちゃんと……その、なんて言うか、いろいろ享有できるだろうって思うんだ。でも、俺だって馬鹿じゃない。妖精だからできないこともあるし、俺が人間だからこそ、花ちゃんを助けることができるってこともあると思う。俺はもしも妖精になる機会があったら、どうすればいいんだろう?
はっいかんいかん、俺はすぐにループ状の思考を持つ癖があるみたいだな。
「良平もいろいろ大変ですね、応援してますよ」
えっ、今なんか聴こえなかったか? 母さんの声が聴こえたような、まあいいや、気のせい気のせい……気のせいだよな…
俺はちょっぴりびびりながら、ひまわり公園まで走った。
「あっ良平くん♪」
花ちゃんは先に公園に来ていたようだ。さすが妖精、マジで飛んでくるから、速い。
でも、女の子を待たすなんて最低野郎だ。ああ…俺、またへこむよ。
「私、そんなに待ってないよ♪」
俺が何も言ってないのに、花ちゃんはそう言って、俺を気遣ってくれるんだ。
マジで可愛いと思った。
俺にとって、マジっていう言葉は特別な言葉だ。
マジ…本当ってことだが。それだけじゃない、心の全部で本気ってことだ。
大人はそんな言葉を汚いって言ったりするけど、俺たち、いや俺にとっては、リアルな言葉なんだ。
あっやべ…また俺、『カタ−リ』入ってなかったか…自粛しないとな。
うん?『カタ−リ』ってなんじゃゴルァだって?
『カタ−リ』は大仰に語るやつって意味だよ。
つーかそろそろストーリ−進めんといかんな。
「ごめん、それじゃあ、行こう」
「うん♪」
花ちゃんが、俺の肩に乗ってくる、花ちゃんは、『ここが一番のお気に入りなの♪』 とか言って、ここ一ヶ月で、すっかり俺の肩を特等席にしてしまったようだ。
これってはっきり言って、すっごい恥ずかしいよな、振り落とされないように、俺の髪の毛にそっと触れている手の感触とか、時折感じる吐息とか…俺、興奮のしすぎでマジで、死んじゃうかと思ったこともある。
近所の水族館、海辺に面した場所にあるんだ。ちゃんとした名前もあったと思うけど、だれも知らない、みんな近所の水族館とか、ただ短く水族館とだけしか言わないから、ここらへんで『水族館』と言ったら、ここって決まっている。ローカルはローカルでこういう便利さがあるんだよ…
「大人一枚、妖精一枚、お願いします」
今、あれ? と思っただろ、ここの水族館は妖精の料金がちょっとだけ安いんだよな…なんでかは知らないけど…
俺は財布からお金を取り出し、料金を支払った。
妖精は財布を持つのが、ちと厳しいんで、ここは俺が払うということにして、あとで花ちゃんが俺にお金を返すということになったんだ。
まあ、俺としては別に全額持ちでもOKだったんだけど、花ちゃんが割カンでって言うから。そこらへんは柔軟に対応だ。しな〜やかにいかないとね、女の子とのデートは。
ちなみにさっき言ったお金のことだけど、都会では妖精用のお金があるらしい、どうやら、一種のカードらしいんだが、ここらじゃまだ見かけない。田舎だからしゃーないんだよなぁ
「水族館、すっごく広〜い」
「そうかな、まあこんなもんじゃない?」
「妖精になったから、なんでも大きく見えるんだよ」
「なるほど、じゃあ、イルカも超巨大生命体だね」
「うん♪」
花ちゃん、すごく嬉しそうだ。俺もなんか嬉しい。
好きな人が嬉しいと思ってるのが嬉しい。
「うわぁ、良平君見てみて、ウナギってすっごい顔♪」
「花ちゃん、それウツボだよ」
「えっあはは。冗談だよ冗談」
花ちゃん、顔が熟れたてトマトだ。うわぁ、可愛すぎ…
楽しい時間って早いもんだな、なんだかイルカショーなんて楽しすぎて、全然覚えてない。つーか本当に見たのか、う〜ん、多分見た。いや絶対見た。
そう俺と花ちゃんはイルカショーを見た。そう思ってくれ……
「おもしろかったね、良平君」
「うん、おもしろかったよ、特にイルカが四回転ジャンプを決めた時なんか、すごいと思ったね」
「本当すごかったねぇ…あっ、綾ちゃんと久雄くんだ」
前方15mほど先にいたのは
「どうしたの、二人とも?」
花ちゃん、そりゃ見りゃわかるでしょ?
「たまたまそこで会ってね」
と久雄
「そうそう、たまたまよ」
と篠ヶ崎さん
どっちも顔が赤いよ。こりゃ、決まりだな。
「そう、たまたまなんだ♪」
花ちゃん、気を使ってるっていうより、ほんとにそう思ってるって感じだな、ちょっとアレなところがあるけど、そこもまた可愛いとか思ったりして。
「じゃあ、俺はここで」
「じゃあ、私も」
ああ、別々に行っちゃったよ。まあ、これはしょうがないよな。
「じゃあ、私も帰ろうかな」
これは花ちゃんだ。
「途中まで送るよ」
妖精っていろいろ危険だからっていう名目があるけど、大部分は花ちゃんともう少し一緒にいたいってとこだな。
「じゃあ、行こうか♪」
やっほい〜、嬉しいよん♪ 俺は心の中で小踊りしながら、家路についたのであった。
夜…闇と沈黙が支配する時間……にもかかわらず
『うにょにょ、こんばんにゃぁ♪』
なんだ、この電波な台詞は…
『誰?』
『妖精く〜んだよぉ♪』
ふ〜ん、妖精か、って妖精なのか!!
『そうですよん♪名前はコリウスって言うの♪』
あれ? 俺は今喋ろうとはしなかったぞ。なんで伝わっているんだ?
『テレパシーなのか?』
『テレパシーというより、あなたの魂に直接呼びかけているんだよ、だから心で思っていることが伝わるのぉ♪』
なるほどな…こりゃうかつなことは思えないってわけだ…で、要するに召喚を了承してくれって言うんだろ?
『そうだよ、ボクのいる世界はね、この世界で言うところのロボットっていう存在に襲われているの、名前教えてちょ♪』
正直俺は迷っていた。どうすればいいんだ…?
花ちゃんと一緒に妖精として生きていく、俺にとっては魅力的な提案だ。
だが、妖精として生きていくということは、人間として、花ちゃんを助けることができなくなってしまうことだ。どうすれば…どうすればいいんだ…
『妖精として守っていけばいいのでは♪』
なるほど、でもな…人間にしかできないこともあるし…
『恋人さんですかぁ♪』
『そうなんだ、望月花ちゃんって言ってね、すっごく可愛いんだ』
『なるほど♪ なるほど♪ 恋人とのランデブー飛行、すっごく楽しいですよ♪』
あああ…そうなんだよな…絶対楽しいよな…
良平く〜ん、花ちゃ〜んって……俺またなんか、すげい恥ずかしいこと考えてたな…
『そんなことないよ♪』
うえっ、そういえば心の中のことが伝わるんだった。
勝手に人の心の中を覗くなよ…
それはそれとして…妖精になるかならないかが重要なんだ…うーん
『妖精ライフ、楽しいよ♪ 花さんともすりすりしあったら、すごく気持ちいいはず♪』
そうだよな…そうだよ…すりすりだよ、すりすり、あの超絶気持ちいいのが倍になるんだよな…ああ俺、悪魔の誘いに乗りそう。
『さあ♪』
う〜ん
『さあ♪』
う〜ん、う〜ん
『さあ♪』
あああ…悪魔の誘いがぁぁ!!
『俺は……俺は御船……違う、やっぱりだめだ!! 俺は人間として花ちゃんを助けるんだ』
『はぁい、さきほどの良平く〜んとセットで召喚了承を確認♪、いまならスマイルつきです♪』
『そんな、ばかなあああああああ!!!今のなし、今のなしだろぉぉぉ』
『我、妖精族のコリウスおよび人間族の御船良平は、その互いの肉体を交換し、心を移し替えることに同意せり♪ この同意のもと我は召喚術を行うものなり♪ 異世界の壁を越え、生きとし生けるすべての存在の親であると同時に子である創造者よ♪ 我に力を♪ 御船良平に祝福を♪ いざ来たれ♪ いざ行け♪ 命の入れ物、魂が纏いし衣服たる肉体よ♪ 新しい命、新しい魂に仕えよ♪』
『妖精のばっきゃろおおおおお!!!』
『相互換身用召喚魔方陣展開♪次元通路確保♪召〜換〜♪』
う〜ん、ふわぁよく寝た。昨日はなんかいろいろあったけど、ともかくよく寝た…
それにしても、なんか変な肌触りだな。ごわごわでざらざらする。
……って俺、妖精に召喚されちゃったんだっけ、そーかそーか…
あはは、もう乾ひた笑ひしかでなひよ…
………………………………………………………………
とりあえず、俺は布団の中を死ぬほど苦労して、脱出した。
「ふう、きつかったぁ、それにしてもなんてこったい、妖精に召喚されてしまうとは」
と、一息ついた俺は、自分の体をつらつらと眺めてみる。そこにはあるはずのない膨らみと、あるはずのモノがなくなっていた。
「・・・・」
俺は…俺は…俺はああぁぁ!! 女の子になってるのくうゎああ!!
おりゃああ、出ろ俺の羽、普通はそんなに簡単にはだせないらしいんだが、そこは努力と根性でどうとでもなる。妖精になって、わずか1分で俺は羽を出すと、鏡に向かって、飛んでいった。
「これが俺なのか…いや…お約束はどうでもいいんだが…」
そこには、白い蝶の羽を持った妖精が、どうしたらよいかわからないって感じの表情をしていた。髪の色は金髪で肩ほどの長さまで垂らし、目は熱帯の海を彷彿とさせるようなグリーン色だ。 …………俺は何言ってるんだろう。そんなことじゃなくて、俺が妖精の女の子になっちゃったってことが大事なわけで…ああ…もう、俺は壊れぎみだな…
ともかく、こういうときは身近な人に知らせるのが一番だ。母さんなら一階にいるはず…
「母さ〜〜ん!!! 俺、妖精になっちまった」
母さんがじいっと俺を見てる。今の俺は裸だから、かなり恥ずかしい。
「あら、そうですか、大変ですねえ」
あらそうって、母さん落ち着きすぎ、って言うかお茶をしみじみすすっている場合じゃないでしょうが!!!
「母さん、俺が妖精になってもなんとも思わないのかよ」
「妖精の召喚はこちらの意思が必要だと聞いていますが?」
うっ、そういわれると弱いな…確かに俺のせいだし。母さんは俺が納得して召喚されたって思ってるのかな?
俺が困ってまごまごしていると、母さんがどこからともなくハンカチを縫って、服を作ってくれた。
「ちゃんと望月さんには伝えるのですよ」
「わかってるよ、それぐらい」
しっかし、まさか女の子になっちゃったなんて…言えるだろうか。自分でも自信がない。はぁ、最悪な気分だ。
三日後、まあいろいろあって、戸籍とか、妖精の服とか買ってきたあと、俺は学校に行くことになった。なんだよ、はしょりすぎだって? しょうがないだろ、短編なんだから…
ちなみに名前はそのままにしておいてくれと頼み込んだんだ。だって花ちゃんのことがあるしな…
「みんな、聞いてくれ、御船くんは三日ほど前に妖精に召喚されてしまったそうだ。いろいろと実生活で困ると思うから、手伝ってやって欲しい」
担任の田川が一ヶ月前とほとんど変わらない台詞を言った。
まったくそんなんじゃ、目立てないぜ、別に俺は困らないけどな。
うわっ花ちゃんがおろおろしてる、そりゃ驚くよな…いきなり彼氏が妖精に、しかも女の子になっちゃったんだから。ああ、今気づいたけど、俺ってもしかして、百合な人になっちゃうのか? いや違う、俺の心は男のままだし、人間の時は男だったんだから、問題ないはず……問題ないと言ってくれ誰かぁ!!!
俺もそうとうおろおろしていたんだろう、悪友の久雄が俺に話し掛けてきた。
「どうしたんだよ、良平? こんなにかわいくなっちまって」
そう、俺は今むちゃくちゃかわいい、なぜかは謎だが、俺の母さんが買ってきた服は赤っぽいワンピースで、黒いシルクハットをフカブカと被っている。自分でもこの格好は倒錯的だなあと思ったりするんだが、母さんそういうところは強引だから、俺に選択する権利はなかったわけ。ちなみに妖精用の制服っていう校則がないから、別にこの格好でも問題ないらしい。
「別にいいだろ…しょうがねえじゃんか」
「しょうがないってお前な…望月さんはどうすんだよ」
「うっせー、お前こそ、篠ヶ崎さんと内緒で付き合っているくせによ」
俺はめんどくさくなって、いきなり切り札をだした。案の定、久雄はまっかになってる。
「なっなに言ってんだよ。俺は別に篠ヶ崎さんとはつきあってないよ」
「はいはい」
俺はそこで会話を打ち切って、愛しの花ちゃんのもとへ飛んでいった。
「やあ、花ちゃん…元気?」
「良平くん…なの?」
花ちゃんが上目使いで聞いてくる。緊張の一瞬ってやつだ。
「そうだよ…」
「うわ〜ん、良平君が女の子になっちゃった〜」
「ちょっと待って花ちゃん!!」
ああ、花ちゃん飛んでいってしまった。どうすりゃいいんだよ、俺は…
「御船くん、何してんの? 花ちゃんを追いかけなきゃ」
俺が呆然としていると、篠ヶ崎さんが俺を叱咤してきた。確かにそうだよな…ここで追いかけなきゃ男がすたるってもんよ。
「待って花ちゃん」
「うわ〜ん、うわ〜ん」
「あと少し…おりゃ」
俺は後ろから、がっしりと花ちゃんを捕捉、まあ要するに抱きついた。
うわぁ、いままでに感じたことのない、や〜らかい感覚、人間だったときは思いっきり、ぎゅっとできなかったからな…
……ってそうじゃないだろ、俺。
「花ちゃん、俺ね、妖精になっちゃったけど、花ちゃんと一緒に、その…すごーもりなことをしたいなぁなんて…」
そこまで言うと、花ちゃんがすごいじと目で睨んできた。うう、軽い冗談だよ。妖精は口が軽いからな…
「ごめん、それは冗談で、妖精になっても、俺。花ちゃんのことが好きだから」
「うう、やっぱり女の子はやだ〜」
そんなぁ、俺の人生の90パーセントは終わった…
俺は真っ白になって、そのままふらふらと家に帰った。
「良平、良平…」
あ…うん、俺眠ってたのか…絶望に瀕しても人間って、いや妖精って眠れるんだな。どうでもいいか。
「母さん、何?」
「久雄くんが遊びに来たわよ」
「わかった、今行く」
俺ははっきり言って、めんどくさかった。が、一応、久雄も親友だしな。顔ぐらいは見せんといかんなあと思ったんだ。
「おっす、良平。元気か」
「なんだよ、久雄」
「腐ってんな、まあしかたないよな、愛しの花ちゃんにフラれたんだもんな」
「お前、そんなこと言うためにわざわざ来たのかよ!!」
俺、マジでキレちゃうかも、でも鏡を見たら、ぷくうって頬を膨らませた、可愛らしい少女がいるだけなんだよな。我ながら情けない。
「すまんすまん、まあそれはいいとして、一緒にさ…その…を買いに行かないか…」
はぁ? 最後は超小声で全然聞こえないぞ。
「はっきり喋れよ」
「そのさ、バレンタインの日にさ、篠ヶ崎にチョコもらったんだ…だからそのお返しを…」
「つまりは一人じゃ恥ずかしいから、一緒に買いにいこうと…そう言ってるわけだね、君は」
「そう♪」
ぐぐぐ、なんかむかつく、にこやかぁな顔だ。くそぉ
「お前な、俺がフラれたのを知っておきながら、誘うって最悪だぞ!!!」
「まあ聞けよ、ホワイトデーのお返しで、恋のリターンがあるかもしれないじゃないか」
う〜ん、確かにそういうこともあるかも、ほら、ここまでで分かる人は分かると思うけど、俺って、へこみやすい楽観主義者なんだよな。
花ちゃんが好きな気持ちに変わりはないし、俺はそれに賭けてみようと思ったんだ。
「で、どうするわけ…」
情けない声で久雄が聞いてきた。まったくこいつは…妖精にたよるやつがあるか!
「ホワイトデーのお返しと言えば、キャンディかマシュマロに決まっているだろ」
「そうなのか、知らなかった」
「そんくらい知っとけよ、まあいいや、買ったものは持ってもらうからな」
「分かってるって、そのかわりアドバイス頼むぜ」
まっ世の中、義務安堵体育ってやつだ。うん?なんか違うな…ああ!!! ギブアンドテイクが正しい言葉だった。
俺も結構あほだな。まあ、心の中の声を聞いているやつはいないから、別にいいけど。
結局、俺が選んだやつは、ピンク色のマシュマロだった、はっきり言って、これ一個で、妖精にとってかなりのでかさがある。
花ちゃんがくれたチョコと比べれば貧相だけど…大事なのは心さ。つまりは俺が選んだってこと。だいたい男がマシュマロ作ってたら(今は女の子だけど)気持ち悪いっての!!
俺は花ちゃんを電話でひまわり公園に呼び出すことにした。妖精の力じゃ、受話器を上げられないから、母さんに手伝ってもらった。要するに受話器を横向きに置いてもらって、そこから話し掛けるわけだ。
花ちゃんも多分おんなじようにしてるんだろうなぁと思ったら、俺はちょっとだけ嬉しい気分になった。
「花ちゃん、ひまわり公園に来てくれない」
「あ…うん、行くよ」
「じゃあ切るから」
「あっちょっと待って…」
花ちゃんがなんか言おうとしていたけど、俺は最後まで聞かずに電話を切った。
俺は花ちゃんのことが好きだから。マジで好きだから。
怖かった
花ちゃんは先に待っていた。
「ごめん、待った?」
「ううん、待ってないよ」
……………………………………………………
沈黙、そうただ沈黙、言葉を紡ぎだそうとするんだけど、形にならない。
花ちゃんは顔を俯かせたまま、俺が何か言うのを待っている。
根性だせ、俺ぇぇ!!!!!!
「こっこっ…」
何ニワトリみたいな声だしてんだ、うおりゃあああ!!!
水面下で鳥は足を猛烈にばたつかせていると言うが、俺は今その気分だ。
「これが俺の気持ちだから」
「マシュマロ?」
そう、それはマシュマロ、マシュマロをハート型に削ったものだ。
なんか恥ずかしい〜。
「そうだよ、花ちゃん、俺は女になったけど、心は男のつもりだから…」
それ以上は言えなかった…あとは花ちゃんの言葉を待つだけだ。
「あのね、ずっと、考えてたの。前に私が妖精になった時、良平君それでも好きだって言ってくれたでしょ。私も………その……良平君が妖精になっても、女の子になっても好きって気持ちに変わりはないって気づいたの、本当だよ」
俺は嬉しさのあまりに、いきなり花ちゃんに抱きついてしまった。
「どっどうしたの、良平くん?」
「すごもーりしようか?」
「バカ…」
花ちゃんすっごく真っ赤になってる、なんとか冗談でごまかせたみたいだ。
俺は花ちゃんと一緒に飛んでいく。
マジで好きだから。
心の全部で好きだから。
「あと一ヶ月で妖精狂いの季節だなあっと♪」
ちょっぴりのヨコシマな心とともに。
おしまい♪
どうも、mk8426です。前回の続きということで、ホワイトデーがやってまいりました(笑)。今回は彼氏の方が妖精になってしまいましたが、これはこれで、ひとつの理想型かもしれないですね。女同士でどこが理想なのかという意見もあるでしょうけども(笑)。
今回は、このお話のために地駆鴉さんが描かれたイラストもいただきました。ノインさんは「この作品にはもったいないぐらいのイラストです。(汗)」とおっしゃっていましたが、ワタクシはそうは思いません。淡い色彩が非常に今回のシリーズにマッチしていると思います。
引っ越し荷物はまだまだ片付かないけれど、とりあえず生活はできているmk8426でした(笑)
2002.03.06 mk8426