「妖精的日常生活シリーズ」

 

2人の『敬』 その後

keyswitch

 

*「妖精的日常生活」シリーズは、ジャージレッドさんの同名作品から生まれたシェアワールドです。
この作品の設定は『妖精的日常生活』に準じておりますが、本編とは一切関係ありませんのでご了承ください。
なお、『妖精的日常生活』本編は、
http://www.keddy.ne.jp/~jersey-r/ をご覧ください

*「妖精的日常生活」の公式設定等は http://www.keddy.ne.jp/~jersey-r/fairy_life_top.html
または 
ジャージレッドさん までお願いいたします。


 このお話は、『mk8426の「仮」ぺえじ!』に、私が投稿させていただいた『2人の『敬』』のその後となっております。
 詳細は・・・・・・・・・ご自分の目でお確かめ下さい♪ (うわっ、無責任)

 時間軸がかなりごちゃごちゃになっていますが・・・・・・・・・気にしないでね♪



「今年もあと一日で終わりかぁ」
「いろんなことがあったわよねぇ」
 二人でしみじみと今年を振り返る。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいことと悪いことのダブルパンチがありましたよ。
 俺が女になって、彼女である敬子が妖精になって。
 戸籍関係は、結局のところ『敬一が妖精に召喚された』と言うことで決着がついたんだけど、それはそれは大変なことに・・・なるかと思いきや、実のところそれほどたいしたことにならなかった。

 まあ、放任主義で育てられたせいもあるかもしれないが、俺の両親は別段驚きもしなかった。
『ああ、そう』
 ・・・たったこれだけ。少しぐらいは自分の息子を心配しろよ・と言いたくなってしまったところだ。
 もっとも、俺はすでに『敬子』になってしまっているので、言われたところでどうでもいいのだが。

 ちなみに、敬子の両親は・・・・・・・・・やっぱりちっとも変わらなかったりする。
 別に演技しているつもりは無いんだけど、俺って普段の生活が敬子とそれほど違わなかったことに唖然としたくらいだったっけ。
 ま、お互いがすでによく知った仲であった上に、こうなる前から両親とも顔合わせ(あ、別に『結婚のため』とかいうんじゃない。ただ単に『一緒に住んでいるんだから、会っておくぐらいは』ってことで会っただけ)をしてあったこともあり、それほどの混乱はなかった・・・というか、まったく無かったと言ったほうが正しいかも。
 俺達の頭の中が一番混乱していたんだと思う。

 とはいえ、妖精に召喚されてしまった以上、親族の問題も(多少は)発生はしたけれど、実は仕事のほうが一番大きく変わったとも言える。
 召喚前は、俺はしがない漫画家の卵・対する敬子は、まだ新人ながらも雑誌に連載をしている、それなりに名の売れた(と本人は豪語しているが、実際のところはそれほどでもない)漫画家だったのだ。
 で、『敬子』としては、今回のごたごたでは対外的には何も変わっていないことになっている。つまり・・・敬子の持っている仕事は、すべて俺のほうへと回ってくることになってしまった。
 本来なら、違うジャンルを書く漫画家同士なので、できるはずは無い・・・のだが、お互いに締め切りが迫ったときなどは、手伝いをしあったせいで、互いの『くせ』も知り尽くしていたりする。
 ・・・ちがうな。二人とも似たような画風の漫画を書くようになってしまっていた・と言ったほうが正解かもしれない。
 で、おれが敬子の仕事を継ぐことになったときは、最初頭を抱えたけど・・・・・・・・・実際に行動にうつしてみると、あんがいすんなりと溶け込めたのには、ある意味拍子抜けした。

 まあ、画風が似ているので、それほど気負う必要は無いだろう・くらいは思っていたのだが、どうやら敬子の『身体』が、彼女自身の作風を覚えているらしい。俺自身もびっくりするほど、彼女そっくりの画風がすらすらと描けたときには、二人で呆然としてしまったくらいだから。
 それに、敬子自身は(多少無理をすれば出来なくもないのだが)もうペンを持つことはできなくなってしまった。しかし、アイデアはそれこそ人間でいるときよりもすらすらと出てくるようになったと言う。
 つまり・・・原作『敬子』・画『俺』と言う形で仕事が進められるようになったのだ。もちろん対外的には『敬子』(=俺)一人で書いていることになっているのだが。


 で・・・その後が大変だった。
 実のところ、敬子自身の連載している雑誌が・・・俺がペンをとり始めてから売上が増えた・と言うのだ。勿論俺の作品が・なんて考えちゃいないし、実際にもそんな事はない。ちょうどその頃、連載している雑誌に有名な一流作家さんが新連載を始めたから、発行部数が増えてそれに引きずられて・というのが現実だったりするのだが。
 でも、雑誌自体が有名になったからかもしれないが、『敬子』当てのファンレターも、売上に比例するように増えていった。
 ・・・・・・・・・とどのつまり、俺達の書いているお話にもちゃんとしたファンがついてくれた・と言うところなんだろう。
 最初のころは、出版社と自宅の往復くらいしかしていなかったのが(というか、今までも二人ともそんな調子だったんだけど)、単行本を出せるほどの量を連載して、いざ単行本化しようとしたとき・・・出版社の人から『サイン会なんてどうです?』なんていわれたときはびっくりした。
 そりゃあ、夢は持っていたよ。漫画家である以上、ファンの人に自分の描いたた本にサインするのは。
 でも・・・ちょっと複雑な気分になったのも事実。
 だってそうだろう? 『敬一』としてではなく『敬子』として・しかも彼女の描き始めたお話で、俺がサインするんて・・・ある意味反則だろう。

 で、実のところ断ろうと思ったんだが・・・敬子が許してくれなかった。
『それこそファンを裏切るのか!』
 ってね。
 確かに、敬子が描いていた時代もファンはいた。それこそ、本当に僅かだけどファンレターも来ていたことを俺は知っている。
 そして俺が後を継いだあとも、その当時からのファンの子達は離れずにいてくれた。いや、前以上に『敬子』の描いた漫画を好きになってくれていた。離れていった子がいるとは今のところ聞いていない。
 それはつまり・・・俺が認められた・ということでもある。

 そして・・・例え二人三脚でも『敬子』のお話は続いている。そして、廻りの読者に支持されている。
 ・・・これほどうれしい事は無いのかもしれない。
 そういわれたとき・・・俺は、目からうろこが落ちたような気がした。
 俺は俺・敬子は敬子だけど、あのお話は俺と敬子が作り上げた『共同作品』なんだって。
 だから・・・サイン会に出る事に決めた。


 もちろん、まだまだ新人である以上、それほど大きなイベントができるわけが無い。というよりも、新人がそんな事をすること自体がある意味前代未聞だったのだが。
 それなりのお店の一角を借りておこなうだけの小さな小さな初舞台。
 でも、俺達はそれで満足だった。

 俺達・・・会場には妖精になった敬子と二人で行った。
 だって、あれは俺だけの物じゃない。俺と敬子の二人の作品。だからこそ二人で行った。
 最初は驚かれたけど(まあ、今まで出版社には俺ひとりで行っていたせいもあったが)、でも、その場で正直に話した。『自分と彼女でこの作品は成り立っているんだ。だから、彼女もこの作品の作者なんだ』ってね。
 むろん、読んでくれているファンを裏切る行為かもしれないと二人で話し合った。でもそれだったら、既に今の状態でも裏切っていると言える。だからこそはっきりといったほうがいい・と。

 でもそれは・・・杞憂に過ぎなかった。
 敬子も・・・すんなりと受け入れられた。来てくれたファンの子達は、『二人で一人なんですね♪』なんて言ってくれて・・・うれしかった。
『二人でサインしてください♪』なんていわれたし・・・もちろんそうした。


 その後は、ある意味有名になっちゃったところもある。
 なにせ、人間と妖精のペア作家・として。
 悪い気分じゃないけど・・・ちゃんと、俺として・そして彼女として見て欲しかった部分もあったのは否めない。

 だから・というわけじゃないけど・・・
 彼女の創り出した・そして現在も連載している作品とは他に、新しく俺と彼女で書き始めたお話もある。
 もっともこちらは、本当の自分たちを見て欲しいと思って、出版社には名前を伏せて、季刊誌にひっそりと載せてもらってる。メインもあくまで俺の創作で、彼女はアシスタント・という形で協力してもらっているだけ。
 うすうす気づいている読者もいるみたいだけど・・・・・・・・・直接『俺たち』を感じて欲しいから、『もしかしたら○さんですか?』なんてファンレターには、あいまいな返事を書いている状態。


 そんなこんなで・・・どたばたがあったけど、何とか今年1年を乗り越えてきた。
 敬子と二人で・・・・・・・・・


「にしても、敬子。結局名前は変えなかったんだな」
「だって、あたしが妖精になっちゃった以上、敬一とは結婚なんて出来ないじゃん。それにあたしも敬子も女だしさ」
「そりゃそうだけど・・・紛らわしくないか?」
 そうなのだ。彼女は結局名前の変更をしなかった。というより、『敬一』を『敬子』に変えてしまったのだ。
 俺の名前も『敬子』・彼女の名前も『敬子』・・・
「いいのいいの。どうせ苗字が違うんだしさ」
「まあ、そりゃそうだが。
 あと・・・・・・・・・結局、羽根・・・出なかったな」
 彼女は必死になって飛ぶイメージをした。でも、羽根は出ることはなかった。つまり・・・飛べなかったのだ。
「・・・・・・・・・飛んでみたかったなぁ・・・・・・・・・」
 彼女は悲しそうな目をする。妖精は飛べるものだ・と思い込んでいた俺達だったけど、まさか『羽がない』などとは考えもしなかった。
 そして・・・彼女が大空を飛ぶことは出来なかったんだっけ。
「でもいいっか♪
 あたしは創造の翼を持っている。そして創造したお話の中で、あたしが生み出したキャラクターたちが自由自在に羽ばたいてるんだから♪」
 かなり無理があるのは、俺の目にははっきりと判る。でも、彼女が言ったことも真実。

「大丈夫だって。俺がお前の翼の代わりになってるだろう?」
「・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・」
 俺は女になってしまったけど、敬子に比べればまだまだ倖せだろう。
 敬子なんて妖精に・しかも飛ぶ羽根すら持たない妖精になってしまったんだから。普通だったら暮らしてゆくだけでも大変だろう。
 でも・だからこそ俺が支えなければいけないと思っている。
 俺にとっては大切な人だから。

 

「さて、年越しそばが出来たぞ♪」
「う〜ん。
 妖精になって、唯一の楽しみが食べることだけってのもちょっと寂しいかな〜」
「毎日俺におさんどんさせているくせに、文句をいうなって」
「文句じゃないよ。それはありがたいと思ってるよ」
 ・・・・・・・・・そういう目で見るなって・・・・・・・・・俺のほうが恥かしくなってくるから・・・・・・・・・

 


 

「さて、12時も過ぎて新年になったし・・・」
「今日は朝一で、近くの神社へ参拝しに行くんでしょう?」
「ああ。そのために奮発して、妖精用の振袖なんて馬鹿高いのを買わされたんだからな」
 そうなのだ。仕事が増えたおかげで収入が増えたのはいい。そしてそれは、敬子のおかげだといっても間違いではない。
(もっとも、元から質素な生活をしていたので、それほどの収入があるとは思ってもみなかったのだが)
 で、今年の収支を会計士の人に計算してもらったら・・・・・・・・・結構な黒字だったりしたのにはびっくりした。
 とりあえず、敬子が妖精になった時に必要なものを買い揃えなかったのが理由なのだが・・・

 何せほとんどの品物は、今まであったもので流用するようにした。新しく買った物といえば衣服ぐらいなものだ。
 召喚された当初は二人とも貧乏だったのもあるが・・・まさかここまで収入がはいるようになると思わなかったのも事実だったりする。
 で、今年は会計士の人にお願いして、申告してもらうことにしたのだが・・・今年であれば、かなりの無駄遣いが許されるということなのだ。
 会計士さん曰く『妖精になったばかりの人は、その年の収支に対しては税金がかなりの額で優遇される』とのこと。しかもかなりのザルで・・・お役所仕事、ここに極まれり。
 で、敬子が駄々をこねて・・・『晴れ着が欲しい』なんていいだしたのだ。曰く『成人式でも着られなかったんだから〜』だそうで。

 考えれば・・・って、考えなくてもわかるが、妖精の衣装っていうものは、普通よりもかなり高く設定されている。勿論それにはちゃんとした理由もあるが。
 で、さらにいえば『晴れ着』などというものは、ほとんどの妖精さんは必要ないものとなる。いわゆる『嗜好品』以外のなにものでもない。
 その額は・・・・・・・・・聞かないで欲しい。俺が欲しかった車が買えなくなったことくらいだから。 もっとも、人間の衣装:妖精の衣装に比べて、人間の着物:妖精の着物は、それほど差がなかった。元々人間の方も高めだからなぁ。それに知り合いの業者の人にお願いしたら『嬉々として』引き受けてくれたっけ。『テストベット』とかいって・・・・・・・・・その辺りは聞かなかったことにしたけど。
「じゃあ早くおきるから、早く寝よう」
「だね。おやすみなさ〜い♪」

 


 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 どこかで見たような風景・・・つーか、2度目?  ちょっと絵が描かれた板が1枚あるのは気になるが。
「敬一?」
 隣には・・・妖精姿のままだったが、敬子がしっかりといた。
「あ、やっぱりそう思う?」
「というか、前回と一緒の気がするんだけど」
「だろうな」
 前回・・・思い出したくもない事柄だが・・・妖精に召喚された刻。
『お初にお目にかかりま〜す♪ ・・・・・・・・・って、何で2人もいるんですかぁ!?』
 そう来たか。

「で、なんで俺だけじゃないんだ?」
 とりあえず、名前を言ったら終わりなのはよっく解っているので、敢えてこう聞いてみる。
『そんなのわかる訳ないじゃないですかぁ。
 でもでも、2人とも何でそんなにどっしりと構えられてるんですかぁ? 普通だったらビックリしているところを利用して名前を教えてもらうって手段が一般的なのにぃ』
「どんな手段だ・どんな。
 つーか、そんなことどこでしったんだ?」
『召喚マニュアル 「誰にでも出来る召喚虎の巻」って本で〜す♪』
 ・・・・・・・・・妖精界には、そんなマニュアルまであるのか・・・・・・・・・

『で、なんでそんなに・・・』
「2度目だからな」
『へ?』
「に・ど・め。
 前回は無茶苦茶だったがな」
『何で2度目があるんですかぁ!?
 魂の波動が合う人物なんて、そう簡単いはいないはずですよ? それに、1度目に召喚されちゃったら、妖精の姿になるはずだし』
「しるか、そんなもの」
 説明するのもややこしいので、パスだパス。

「で、これは一体何なんだ?」
 感覚的には前回と同じだったが・・・唯一違う場所があった。さっきの板。
『へ? 人間界では「お正月」という噂だそうですから用意させていただきました〜♪』
 そういって、指したものをみて・・・・・・・・・二人で頭を抱え込んでしまった。
「なんで、富士山の絵が描かれた書き割りが立ってるんだ?」
「それになんで『ナス』なんて持ってるのよ?」
 二人で突っ込んでみる。
『え〜? 召喚マニュアルに書かれていたんですよ。
「人間界での正月という季節に召喚する場合は、『フジサン・タカ・ナスビ』を用意すると、人間はうれしくなり、成功確立が非常に跳ね上がる」
 って。
 えと・・・うれしくありません?』
「タカは?」
『私の羽を見て・・・気づきません?』
 あ、タカの羽だ。
 って・・・・・・・・・そりゃあ、初夢に見たらその年倖せになると言われているものだっつーの。
 まあ、そんなので舞い上がって妖精に召喚されるのも、間抜けと言っちゃあ間抜けだと思うがな。

「それは1/2の夜・つまり明日やるのがベストなんだ。今日やっても意味はない」
『えーっ!? そうなんですか?
 じゃあ今度、虎の巻の修正を依頼しておかなくっちゃ・・・』
 せんでもいい・せんでも。
『ということで、明日また出直してきま〜す♪』
「こらこらこら。俺は召喚に応じる気は、雀の涙さえもないぞ」
『どうしてですか〜!?』
 だから耳元で騒ぐな!
「俺は敬子を支えるために、人間でいなくちゃいけないの。
 これで俺まで妖精に召喚されたら、人間世界で生活まで出来なくなっちまうからな」
「敬一・・・」
『う・・・・・・・・・ちょっといいお話かも・・・・・・・・・』
 そういって、どこからともなくハンカチを取り出しながら目を吹き始める妖精・・・でも、この可愛らしさにだまされてはいけないのは前回で学習済み。


「・・・そんな風に、かわいこぶっても無駄だぞ。前回はそれで煮え湯を飲まされたんだからな」
『ちえっ・・・だめかぁ』
 やはり嘘泣きだったか。
『でもでも、お二人って恋人なんですよね?』
 いきなり話をの内容を折り曲げるか?
「ああ、そうだ」「そうだよ」
『片方は人間・もう片方は妖精。二人が一緒になることは絶対に出来ません。
 ですが、貴女が召喚に応じてくだされば・・・何の問題もなく結婚できるんですよ♪』
 そういう考えも・・・・・・・・・って、
「ちょっとマテイ! お前は女だろうが!
 敬子も女なんだぞ。結婚できるわけないだろう!」
 巣篭もり友達じゃないんだから。
 ・・・・・・・・・あ、嫌なことを思い出してしまった。例の季節の敬子・・・・・・・・・

『へ? 私は男ですよ?』
「「ほへ?」」
 あ、今度は俺たちの方が固まってしまった。だって、目の前にいるタカの羽を持つ妖精は、どうみても女の子にしか見えない・・・・・・・・・フリルのついた衣装とか・・・
『ほらっ♪』
「こっ、こら! みせんでいい!!!」
 ・・・・・・・・・いやぁ、本当に男の子だった・・・・・・・・・


 とまあ、そんなことは放っておいて。
「とにかく、俺は召喚に応じるつもりは全くないっ!」
 俺は心を鬼にして・・・キッパリとそう言い放った。
『う〜ん・・・意思の堅い方ですねぇ。しょうがありません』
 お、諦めてくれそうだな。
 とはいえ、聞いた話だと毎晩でも来るらしいから・・・これからは気を引き締めていかないといけないぞ。
『先ほどの会話の中に、お名前が出ていましたのでそれを召喚の承認とさせていただきま〜す♪』
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え゛
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「「しまったぁーーー」」
「前回と同じパターンに引っかかった気がする」
「敬一のドジ」
「お前だって俺のことをしっかり名前で呼んだだろう!?」
「気のせいよ、気のせい」
「嘘付けっ!」

『では・・・
 我、妖精族のカルーラおよび人間族の敬一は、その互いの肉体を交換し、心を移し替えることに同意せり♪ この同意のもと我は召喚術を行うものなり♪ 異世界の壁を越え、生きとし生けるすべての存在の親であると同時に子である創造者よ♪ 我に力を♪ 敬一に祝福を♪ いざ来たれ♪ いざ行け♪ 命の入れ物、魂が纏いし衣服たる肉体よ♪ 新しい命、新しい魂に仕えよ♪
 相互換身用召喚魔法陣展開♪ 次元通路確保♪ 召〜喚〜♪』


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 あ、あれ? 前回みたいにひっぱられる感覚がない。
『あ、あやや?』

『あの〜、一つお尋ねしたいんですが。貴女のお名前は「敬一」様で間違いはないんですよね?』
「あまりはっきりと肯定したくないが・・・合ってる」
『召喚呪文も間違ってませんし・・・どうして?』
 妖精はそのまま頭をひねってしまった。と、
「やっぱり、あたしの身体だから敬一の名前だと召喚できないとか?
 何せ今は『敬子』なんだし」
 なるほど・・・・・・・・・って、召喚したがっている妖精の前でそんなこというんじゃないっ!

『な〜るほど、そういうことでしたか♪』
 あっちゃぁ・・・しっかりと聞いてやがった。
『ではやり直し。
 我、妖精族のカルーラおよび人間族の敬子は、その互いの肉体を交換し、心を移し替えることに同意せり♪ この同意のもと我は召喚術を行うものなり♪ 異世界の壁を越え、生きとし生けるすべての存在の親であると同時に子である創造者よ♪ 我に力を♪ 敬子に祝福を♪ いざ来たれ♪ いざ行け♪ 命の入れ物、魂が纏いし衣服たる肉体よ♪ 新しい命、新しい魂に仕えよ♪
 相互換身用召喚魔法陣展開♪ 次元通路確保♪ 召〜喚〜♪』

 ああ、これで人間の身体ともおわかれかぁ。
 これから漫画家として生きていけるんだろうか?
 ・・・とかいろいろと考えをめぐらせていても、一向にひっぱられる気配はない。
『あ、あれれ? 何で召喚できないんですかっ!?』
 あ、妖精の方が慌てだした。パニックを起こし始めてる気もする。

 


 どうやら俺の身体を妖精界へ召喚できないらしい・ということがわかったので、とりあえず話の席に着くことにした。
 ご丁寧にテーブルまで引っ張り出されてきて・・・『お茶とコーヒー、どちらがいいですか?』なんて聞かれて・・・

 出された飲み物を飲みながら・・・互いの腹の探りあい開始。
『貴方達の魂と肉体って変わってますよね』
「まあね〜」
「前回の召喚時にすったもんだがあったからな?」
『何があったんですか?』
 まあ、話しても問題ないだろうから・・・一応彼にも教えることにした。 見た目女の子なのに『彼』・・・違和感が・・・

『そんなことがあったんですかぁ』
 カルーラと名乗った妖精は、そのままうんうんと唸り始めてしまった。
「どしたんだろう?」
「どうしても召喚したいから、自分のもってる知識で何とか出来ないかと考え込んでるんじゃないか?」
「なるほど」
 ・・・で、10分ほどして・・・
 彼女の首が、かっくりと曲がってしまった。
『あなたの身体を召喚する方法が・・・・・・・・・ありません』
 そう一言いって、テーブルに突っ伏してしまった。
 ちょっと可哀相に思ってしまったのは、ここだけの秘密。

 カルーラの説明だとこういうことになるらしい。
 俺・つまり敬一の魂は、俺の彼女・敬子の肉体に既に定着してしまっている。
 そしてそれは、妖精の召喚時に使われる『肉体を交換し、心を移し替え』という部分で、矛盾が生じてしまう・ということらしいのだ。
 召喚は、妖精と名前を呼ばれた人間の間で魂を入れ替えることを意味する。
 最初の『肉体を交換し』という部分でお互いの魂を肉体から分離して、『心を移し変える』という部分で魂を交換するということらしい。
(俺にはそのあたりよくわからないから、完全にうけうり)

 で、今回引っかかったのはそこ。
 おれは、魂は敬一だが肉体は敬子なのだ。
 もし『敬一』で召喚しようとすると、肉体から魂が分離できない。
 もし『敬子』で召喚しようとすると、魂を交換できない。
 例えどちらだろうと、召喚呪文自体に矛盾が生じてしまい、呪文自体が成立せずにキャンセルされてしまうそうなのだ。
 簡単に言えば・・・どうがんばっても、俺を召喚することが出来ない・という結果らしい。


 正直なところ・・・ほっとしている部分と、がっかりしている部分が入り混じっている俺がいることに・・・驚きとため息がでた。
 ほっとしている部分・いわなくてもわかっているだろうが、妖精に召喚されてしまったら、今までの生活が全て露と消えてしまうということ。それなりに名の売れはじめた自分たちとしては、二人とも妖精になってしまうと、漫画を描くことさえ不可能になってしまう。
 これは・・・ファンへの冒涜に他ならない。だから、少なくとも俺だけは召喚されるわけには行かなかった。
 がっかりしている部分・やっぱり敬子とは結婚したい。本当の夫婦になりたいという願望が、俺の心のそこにあったんだなぁ・・・って、気づかされてしまった。
 どっちも捨てがたい・でも、どちらかは捨てなければいけない選択。
 俺は敬子を支えると誓った。そして、ファンを裏切らないとも誓った。

 でも・・・・・・・・・・・・だからこそ・・・・・・・・・


『ざんねんですが・・・召喚は今のところあきらめますぅ』
 さらに悩んでいたところをみると・・・召喚呪文のアレンジで何とかできないものかと考えていたらしい。
『でも、絶対に諦めません!
 いつか必ずあなたの身体を奪いに帰っています!』
「「帰ってくるな!!!!!!」」

 



「なんか・・・変な夢見た」
「つーか、夢じゃないって。アレ」
 初日の出の朝日を浴びながら・・・俺と敬子はベッドからでてきた。
「やっぱしそうか・・・って、敬子も同じ夢を?」
「おなじっていうか、あの時と一緒でしょう。
 あたしがあなたの夢に引きこまれた・って所じゃない?」
 なるほど。
「でもよかったじゃない。妖精に召喚されない体質だとわかって?」
「・・・・・・・・・ホントに心からそう思ってるのか?」
 答えがない。目線もそらされてしまったし・・・
「・・・そりゃあ・・・敬一が妖精になっちゃえば、結婚もできるし子供もできると思ってる。そのほうがあたしもうれしい。
 でも、あたしたちは曲がりなりにもプロなんだから、途中でファンを捨てて自分たちの倖せに走るのは良くないと思う。
 ・・・・・・・・・だから・・・・・・・・・がまんする!」
 俺と同じ・か。
「でも、連載をきちんと終わらせられれば、いつでも召喚に応じられるよね」
「まてぃ!」
「なによぉ。中途半端じゃなくて、完全に終わらせればいいだけじゃない」
 ・・・・・・・・・こいつは・・・・・・・・・
「一つ聞いていいか?」
「ん? なに?」
「お前が構想して、俺が書いている今の連載・・・何話予定だ?」
「それは勿論! 打倒・ペリー・ローダン!!!
「死ぬまで書いてもおいつかんわぁ!!!!!」

「とまあ、冗談はさておいて」
「本気にしか聞こえなかったぞ」
「早くお参りに行きましょう♪
 今年こそ『いい年でありますように』ってお願いに行かなくちゃ♪」
「・・・そうだな♪」


 今年は始まったばかりだし。
 それに俺たちの人生も、まだまだスタートしたばかりだ。
 いろいろあるだろうけど、それもまた人生・二人で一緒に乗り越えて行けばいいさ。


 そして俺たちは、朝日を浴びて歩き始めた。
 新しい年・新しい未来に向かって。


 

 前回・・・「続きは書かない」って書いた気がするんですが・・・

 何故か『お正月用コネタ』として、こんな電波が降りてきたのです。それも暮れも押し迫った12/30のお昼にいきなり・・・

 で、私のキャラの中で、このネタを使えそうなのって・・・・・・・・・彼女たちしかいなかった・と。

 ゴメンナサイm(_ _)m

 

 ちなみにネタは・・・重いお話の中に埋もれてしまっていますが・・・

『お正月の召喚時に、『1富士2鷹3ナスビ』を実行する妖精さん』というコネタだったのです。

 ・・・・・・・・・書いたことと一致していないし・・・・・・・・・

 まぁ、これが公開される頃には年が明けているから・・・去年書いたこのお話は去年の恥ということで♪

 綺麗さっぱり忘れ去ってください♪ 私も忘れますから♪

2003.12.31 keyswitch


 

「結局、お参りにいったのか人にもまれに行ったのかよくわからなかったな」
「日本人のクセみたいなもんでしょう。『お正月だけは神社仏閣にお参りする』って習性は」
「・・・いえてる。もっとも、俺達もその中の・・・だけどな。
 で、おまえは何をお願いしたんだ?」
「今の倖せが続きますように♪」
 これには・・・敬子の性格をよく知っているつもりの俺はちょと驚いた。
「おまえのことだから、『もっと有名な漫画家になれますように』だと思ったんだがな。
 だいたい、去年までそればっかり願ってなかったか?」
「まぁね。
 でも、こうなっちゃって・・・何気ない昔の生き方が、じつはすっごく倖せだった・って感じちゃったのよ。敬一と2人で喧喧諤諤やれた時がね・・・
 失ってから気づく・・・・・・・・・人間ってそんなものなのね」
 敬子・・・
「でも、あたしは今の生活でも倖せだと感じている。
 身体は妖精になっちゃったけど、コレも今のあたし。ペンは持てないけど立派な漫画家のあたし。そう胸を張っていえる様になりたい」
「張るような胸なんて、妖精にはないぞ」
「うっさい! ちゃちゃを入れない!」
「それに・・・今でも立派な漫画家じゃないか?
 確かにペンは持てないけど、おまえの創造した世界は、俺の手を通るにしろファンに送り出されて、みんなを倖せにしてるじゃないか。
 おまえの想いがみんなを倖せする・充分プロじゃないのか?」
「そう・・・かな?」
「モノを生み出すってそういうことだろう?
 物作りってマンガだろうと小説だろうと、生み出した物語が人の心に残ってくれて、その人の倖せを見つけ出すのに僅かでも手助けができれば・・・それは、意味ある事だと俺は思うけどな」


「で、そういう敬一はどんな願い事をしたの?」
 あー、やっぱりそうきたか。
「・・・・・・・・・まったく一緒・・・・・・・・・」
「へ?」
「敬子と一緒で『今の幸せが続くように』ってな。
 ま、だからさっきの答えもすらすら出てきたんだが」
「なーんだ」
「あ、でも1つだけ違うところが有るな」
「なになに?」
「『妖精に召喚されませんように』ってな♪」
「ぷっ」
「笑いごとじゃないだろう? 去年の事といい、今日の事といい・・・散々引っ掻き回されただけじゃないか。
 流石に今年もアレに引きずられるのは勘弁だぞ」
 もっとも既に、今年1回体験したけど・・・2度と体験したいとは思わない。
「まっ、あのカルーラって娘・・・じゃない・男の子も、召喚方法がないって言ってたから大丈夫じゃない?」
「まあな。
 と、明日は挨拶回りだから早めに寝るとするか」
「だね」


 で・・・・・・・・・
『ということで、1日過ぎましたからまた来ちゃいました〜♪ 召喚は出来ないけど、お互いお話をしてればそのうち解決策が見つかるかもしれないし♪』
「来んでいい!」
 あ、隣で敬子が笑い転げてる。どうやら神様への願いは、1日を待たずして叶えられなくなったらしい。
 ・・・勘弁して。

 



 ・・・・・・・・・お正月・というか、大晦日に『年賀メール』としてこのお話を関係者各位様にお送りさせていただきました。が・・・・・・・・・誤字・脱字の嵐でした(涙)
 ということで、誤字修正&ちょっと追加です(蛇足・とも言います)

 本来ならば、ここでお返事を書かなければいけないのですが・・・ちょっとした理由から・・・
 この場を借りて、年賀メールにてこのお話をお読みになって、感想を頂きました皆様には本当にお礼申し上げますm(_ _)m ありがとうございました。
(とある御方のお返事に、ドキッとするようなことが書かれていました・・・先を読まれているかな?)

 ご笑覧いただければ幸いです。 ではでは。

2004.01.06 keyswitch



どうも、mk8426です。そういうわけでkeyswitchさんの新作をお届けいたしました♪
実は、年賀メールで頂いた時から掲載を狙っていたというわけで・・・(笑)。
ま、前作も掲載されてるし〜ということでチャットで了承は得ていたのですが、掲載が遅れている間にkeyswitchさんから「訂正版を送るので待っててください」と連絡がありまして。
で、送られてきたのがこの作品であります。
前作と変わらない、このほんわかした雰囲気がたまりませんね(笑)。
keyswitchさん、掲載の許可をありがとうございました♪

2004.01.06 mk8426

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