彼女のIDナンバー

30万記念・・・責番もどきとかだったり(^^;;

作:kagerou6

 

 

「薫君!そっちのデータ検証は終わったの?」桜木栞はそう言って部下の久保薫を怒鳴りつけていた。
「こっちのは終わってます、後はA-2k・2mの培養データとA−1jの耐候データだけですよ」薫はそう言って数枚のデータ紙を振り栞に答えていた。
「そっか、じゃあ後はラボの帰り待ちか」薫の言葉にため息を付くと椅子に座ってしまう栞。
「どうする?・・・今のウチにご飯に行く?」栞は顔を上げ薫に話しかけたが、薫はそれには苦笑いで答える。
「あたしとじゃ不服?」断られた事にちょっと傷ついた栞は薫を睨みながら話を続けたが、薫は驚いた顔でそれを受けると深いため息を吐く。
「先輩・・・ひょっとしてA−1fの検証データ、部長報告が午後3時だっていうの忘れてませんか?」
「!」栞は薫の言葉に凍り付き、薫はまた深いため息を吐いた。

「どこだったかなぁ」栞は頭を掻きながらPCに入れてあるデータのチェックをしていた。
「だからデータは項目毎に整理したほうが良いっていつも言っているんですがねぇ」薫はそう言いながら自分のPCからいくつかのデータを取り出し栞のPCに転送する。
「あの時のデータと結果、時系列毎の写真です・・・課長報告はこれでOKでしたが他に添付するものはあるんですか?」薫はそう栞に話しかけた。
「そうね・・・後添付したとすると」栞は目を閉じて椅子を傾け考え始めた。
「工場の試作量産・Z−3の結果とか?」薫はデータを報告書に添付しやすいように加工しながら栞に話しかけていた。
「いや、試作量産じゃなくて・・・搬送テストだわ!」栞はまるで体がバネで出来ているかのように飛び起きるとそのまま机の資料を引っ掻き回し始めた!

「おかしいなぁ」いくつかの資料を見比べながら栞は頭を傾けていた。
いくら探しても肝心の資料が出てこないからである!
「あの時はたしか・・・A−1bの搬送OK貰ってそのままA−1fの・・・」そう言いかけた栞の顔がどんどん蒼く変わっていく。
それはまるで蝋人形にでもなったかのように、まさに血の気がなくなったかのようだ!
「何かありましたか?」さすがにいつもと違う栞に薫が気付き、出来るだけ静かに声を掛けた。
ここで騒いでしまうと仕事が進まないと思ったからだ。
薫は栞が話してくれるのを彼女を見つめながら待っていた。

「薫君・・・怒らないで聞いてくれる?」恐る恐る話しかけた栞はいつもの豪快さが無く、まるで少女のように儚げな声であった。
「まぁ、約束は出来ませんがね」軽く答える薫に栞は頭を下げると一枚の紙を差し出した。
「搬送の費用請求、まだ出して無かったわ」そう言って青い紙を薫に見えるように机に置いた。
「はぁ?」薫もその紙を見て呆れた声を出す。
「つまり、会計から費用が出てないのね」
「それってまさか?」栞の言わんとしている事に気付き言葉を詰まらせる薫。
「そうなの、私達の費用・・・つまり給料がそれに使われてちゃっているの」あははと誤魔化し笑いをする栞に薫は頭を押さえる。
「研究以外の事はいつもなにか”抜けて”ますねぇ」ため息を付く薫に栞はまた笑って誤魔化していた。

「どうしよう、今月のお給料が」泣き顔になりそうな栞に薫はため息をつきながら”用意してあったもの”を彼女の鼻先に突き出す。
「今月の〆まで後1時間ありますから、課長のサインを貰って会計に提出してください」薫がそう言うと栞はそれを奪い取り必要事項を書き込んでいく。
「先輩がそれをしている間にぼくの方でデータを纏めますので資料を出しておいてください」薫がそう言うと栞は自分のIDカードを薫に差し出す!
「あたしのロッカーを見てきて!」突然の事に驚く薫を無視し、栞はそう話を続けた。
「し、しかし・・・女子ロッカー室に入るわけには」もし誰かに見られたらと思うと薫は戸惑ってしまうのだ。
「こんな時間にロッカーに行くのは掃除業者かおばかなやつだけよ」自分の事を棚に上げ栞は行くように催促している。
「しかし、見つかったら言い訳出来ないじゃないですか?」薫はばれた時の事を考えそう言い返したが、栞は壁に掛けてあった上着と帽子を押しつける。
「でも・・・入れないと思いますが」薫はそう抵抗したけど栞はメモ用紙にいくつかの数字を書き込み差し出す。
「それで入れるよ・・・時間無いんだから早く行ってよね(怒)」そう言って怒り出す始末。
こうなると栞は誰の意見も聞かない”無敵”状態なので薫は諦めてドアに向った。

とりあえず上着を着て帽子をかぶり女子ロッカー室に向かう薫。
幸いというか何というか、栞も薫も身長の差が余り無いので栞の上着を着ていても違和感が無いのだ。
とはいえ恥ずかしい事には変わり無いので、薫の歩みは段々早歩きに変わっていていつの間にか女子ロッカー室の前に立っていた。
「誰もいないよね」つい廻りを確認してしまいながら、薫は栞のIDカードを素早く通しパーソナルコードを打ちこむ。
その間も廻りが気になりつい目をあちこちに向けてしまい、危うくコードを間違いそうになって時間がかかってしまうのであった。
最後の数字を打ちこむとドアがカチリと音を立てカギが開く。
薫は素早く中に入ると後ろ手にドアを閉めつい座り込んでしまった。
「もう2度とごめんだなぁ」そうため息を吐くと、ここに来た目的を思い出し立ちあがる。
「桜木は・・・と」ロッカーの前でネームプレートを読みながら栞のそれを探していると、2列目の最後でやっと見つかった。
「場所を聞いてからくれば良かったかな」苦笑いしながら栞のパーソナルコードを打ちこんでロッカーを開けるが、中に積んである資料を見て固まった。
それはロッカーの半分ほどまで積んであり、どう考えても女性のロッカーと思う事が出来ないのだ(笑)
薫はまたまたため息を吐くと、積んである資料を整理・分類しながらお目当てのものを探し始めた。
いきなりそれを探そうとしても関連がきちんとしていないので見落とすと思っての事である。
薫は資料をなんとか探し出すと来た時と同じように廻りを確認しながらロッカー室のドアを開けた。
そして誰もいない事を確認してサッとドアから飛び出ると直ぐにドアを閉め何事も無かったかのように歩き始めた。
「時間がかかったかな」ふとそんな事を思い浮かべながら栞が待っているはずの研究室へ足を向けた。

それからは戦場であった!
会計から帰ってきた栞と一緒に資料を纏め、分類し、報告書を作る為にキーボードを親の敵とばかりに叩き続けていた!
「これ数字違いますよ」薫は気付いたものを栞に突き出し訂正を要求する。
「これも添付しなさいって言ったでしょ!」栞もそう怒鳴り、MOを薫に投げつける!!
マシンガンのごときキーボードの音と怪獣の鳴き声?のごとき罵声が消えたのはそれから1時間の後・・・3時少し前であった。
「ふぅ、これで大丈夫ですね」薫は最後の資料を打ち出し栞に手渡した。
「ふむ、OKね・・・じゃあ行ってくるわ」栞はそう言ってドアに手を掛け薫に顔を向けた。
「あたしは定時まで帰って来れないと思うから、時間が来たら上がって良いわよ」
「そうなんですか? じゃあA−2mのデータをラボに確認しておきますよ」薫がそう言うと栞は笑みを浮かべる。
「それと”気に入った”のは判るけど、帰りにはハンガーに掛けておいてよね♪」栞はいたずらっ娘のような笑みを浮かべるとドアを開け出ていく。
「”気に入った”・・・なんの事かな?」そう呟いた薫は栞の服を着たまま報告書を作っていた事を思い出し顔を紅く変えた(笑)

「それじゃあ明日の午後に確認が出来るんですね?」ラボに電話をしていた薫は相手の返事にそう答えていた。
「判りました、それじゃあ桜木主任と明日2時にラボへ伺いますので」そう言って薫は電話を切ると壁に掛けてある時計に目を向けた。
「4時50分か・・・おっと先輩の服ハンガーに掛けておかないと怒鳴られるな」そんな事を呟き壁からハンガーを取ろうとしていると、不意に眩暈がして目の前が暗くなってくる感じがした!
頭を振りそれを押さえようとしたけど立っているのも辛くなっていた。
”なんだこれは?”異様なその眩暈と共に段々と体が動かなくなっていく薫。
ふらついた瞬間手を机にぶつけてしまい一瞬意識がはっきりしたが、それも一瞬でしかなく今度は瞼まで重くなってしまった。
”医務室に電話を”薫は手をつねりなんとか助けを呼ぼうとして受話器を持ったものの、とうとう重い瞼を支える事が出来なくなり座り込んで意識を失った。

「ほら起きなさいよ!」栞はそう言って目の前にいる相手を揺さぶり続けていた。
報告を終えて帰ってきたら見た事も無い女が部屋にいたからである!
「アンタ誰よ? どこから入ったの?」怒鳴りつける栞に相手がようやく目を開けた。
「アンタ名前は? どうしてここにいるの?」そう言って怒鳴っている栞の顔を見て相手は驚いた顔に変わっている。
「それにこの服はあたしのじゃない!・・・なんでアンタが着ているのよ!」栞はそう言って相手の服を無理やり脱がそうとボタンに手を掛けた。
「先輩止めてください!・・・自分で脱ぎますから」そう言ってボタンに伸びた栞の手を払いのける。
「え?」さすがにそう言われて栞も相手が誰なのかなんとなく判り、金魚のように口をパクパクさせてしまった。
自分の考えが余りにも不自然であったからだが、相手はそんな栞を見て溜息を吐くと自分の名前を口にした。
「さっきから先輩は変ですよ?・・・ぼくは久保です、久保薫ですよ?」そう呟いた相手の前で栞はへなへなと座り込んでしまった!

「君が久保君・・・ねぇ?」課長はそう言って薫の事を見つめていた。
課長は栞が話した「薫が女になった」などという話が信じられず、自ら薫の確認に来たのだ。
「それじゃあ今朝挨拶した事を思い出してくれないか」課長はそう言うと薫にいくつかの事を確認し始めた。
「・・・と、言った時君はなんて言ったかな?」
「いえ、課長はそうは聞かれませんでした、確か資料に添付しましたA−1fの衝動時の」薫がそこまで言いかけて課長はそれを遮る。
「どうやら間違いじゃなさそうだね」課長はそう呟くと社内用PHSを取り出し部長のところに連絡を始めた。

「「「なるほどねぇ」」」部長・専務・社長は渋い顔で薫の事を見つめていた。
「久保君はまだ若いですが熱心な研究者であり、彼はこれからも我が社に貢献すると考えております」課長はそう言うと重役に向かい頭を下げた。
課長は薫が変わってしまった事は仕方が無いとして、優秀な社員を手放したくなかったのである!
そこで先手を打ち重役に相談と相成ったのだ。
3人の重い視線が薫を貫いていき、心の奥底までも見透かされた気持ちになってしまう薫!
「それで、君はどうしたいのかな?」社長は薫に向かい口を開いた。
「ぼ、私は今の仕事が好きですし生き甲斐を感じております、ですから仕事は続けたいと思っています」
「廻りから変な目で見られるかも知れないぞ?」と専務。
「いえ、今でも変なやつだと陰口を言われていますので、さほど変わることもないかと」苦笑しながらそう答える薫に部長は頷くと、隣の社長に耳元で何かを話し始めた。
「君は課長だけじゃなく部長からも信頼されているようだね」社長はそう言うと口元に笑みを浮かべ立ちあがった。
「後藤君、君の案で良いよ。優秀な人材は男女関係無いからね」社長は部長にそう言うと、部長は静かに頭を下げた。

「久保君は一旦退社扱いとして再入社させようと思う」部長は二人を前にしてそう言った。
「その間いくつかの手配もしなければならないし、ご家族へも連絡をした方が良いだろう」その言葉に薫も頷く。
「その間、すまないが桜木君・・・君のところにおいては貰えないだろうか?」部長はそう言って栞を見つめた。
「あ、あたしの?」自分を指差す栞に部長は頷いて答える。
「君なら久保君の事は良く知っているだろうし、誰にも話す事は無いだろうし」部長はそう言って栞を見つめ同意を求める。
「ですが、私はワンルームマンションでそんな余裕なんて」
「そうか、それは残念だな・・・半年分の家賃補助を出そうと思っていたんだが・・・」
「やります!やらせていただきます!!」部長の口元が栞の言葉に歪んだのは言うまでも無かった。

「それじゃあ帰ろっか?」栞はそう言って薫の手を握った。
「でででも良いんですかぁ?」部長の提案に栞が賛成したとはいえ、当人の薫は戸惑ったままなのだ。
「良いって、だって女同士だもん♪」そう言って栞は改めて薫の事を見つめる。
「今日から女の子の事、沢山教えてあげるからね♪」そう言ってハンターのような目で薫を見つめる栞!
「ええええんりょさせていただきたいなななななあぁぁ」
「だ〜め! 部長命令だから逆らうとクビになっちゃうもの♪」そう言って栞は薫の腕を取ると歩き始めた。
「さて、まずは下着を揃えないと・・・あたしとお揃いの買おうね」そう言って微笑むとちょうど走ってきたタクシーを止めると、薫を押し込むようにしながら乗り込んだ。

さて、久保君の運命はいかに?

 

 


 

と、いうわけでmkさんち30万ヒット記念という訳で、”もどき”でした(^^;;
いつもと違ってちょっぴりシリアス風味を効かせましたがどんなものでしょう?
薫君と栞さんは良いコンビだと思うのですがこの後はどうなるのか・・・作者は考えてません(笑)
もしかすると続くか?等と期待している人は・・・いないと思うけどどうかなぁ(^^;・・・mkさんにご連絡を(^^)/

ではでは改めまして30万ヒットおめでとうございます!

 


ども、mk8426です。このたびは30万ヒットありがとうございます。これも訪問してくださるみなさんのおかげです。

・・・などと堅苦しいことはこの辺で。いやぁ、なんか気付いたら30万行ってるし(爆)。
(300001踏んだのはここだけの話)
最近はkagerou6さんの投稿と日記くらいしか更新がないので、ここまで回るとは思いませんで・・・(汗)。
まあ、これからもこんな感じでやっていくと思いますので、よかったら見捨てずに時々覗いてやってください。

(・・・kagerou6さんの連載、投稿分が溜まってるのはあまり大きな声では言えない)

2006.10.17  mk8426

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