和美ちゃんスクールライフ
和美ちゃん 32話
作:kagerou6
「暑くなってきたねぇ」
佳子は下敷きをパタパタ扇ぎながらそんな事を呟いていた。
「もう12時だからねぇ」ぼくはそう言いながら鉛筆をノートに走らせる。
「ホントに暑いわねぇ!」
「今日はもう30度近いっていうからねぇ」とぼく。
「和美なにいらついてんの?」
「佳子?・・・ぼくがここに居るのはなんでだか忘れたの?」
ぜいぜい息をしながらぼくが佳子に叫ぶと不意に襖が開いて女性が音を立てずに入ってきた。!
「ホント!・・・どうして和美さんがいるのかしらね?佳子ちゃん?」静かにそう呟くと持っていたコップを佳子に押し付ける!
「ヒィ!」いきなり冷たい物を押し付けられ悲鳴を上げると、目を吊り上げ!押し付けた相手に目を向ける佳子。
「?・・・どうしたの、なにかあったの?」見下ろしながらそう呟く女性に佳子はバツが悪そうに目を逸らす。
「あらあら・・・佳子ちゃん首のところ濡れてるわよ♪・・・」惚けて呟くと女性はぼくに顔を向けた。
「せっかくのお休みなのに・・・ごめんなさいね」そう言って優しい笑みを浮かべている彼女に佳子は俯いてしまっている。
「いえ・・・試験前ですから、元々出かけるつもりも無いですし・・・」
「一人でやるより・・・ずっと良いですからね」
「そう?・・・・でも、はっきり言うとお邪魔じゃない?」そう言ってキリっとした目を佳子に向ける女性。
「・・・あははは・・・」さすがにぼくはなにも言えなかった。
「まぁ・・・ほんとに誰に似たのかしら?・・・遊ぶ事しか考えないんだから・・・」ため息混じりに呟くと
「お母さんだって・・・高校の時エリーのお母さんに頼り切っていたんじゃないのよぉ!」そう言って反撃する佳子。
「わ・・・私だって少しはしてたんです!」
「あたしだってしてます・・・それは、ちょっとだけどさ・・・」そう言って二人は口ゲンカを始める!
「・・・どう見ても佳子はお母さん似だよな・・・」
「そうね・・・あんなに似ているんだからね」と、涼しい顔の志乃が答える。
「あたしは昔から知っているからね・・・でもまぁホントに似たもの親子ねぇ」と亜紀。
「あはは・・・・」ぼくは二人の言葉に頷きながら、そんな関係の親子も良いなぁと思っていた。
「ねぇこれで良いんだっけ?」佳子はそう言って書きこんできたノートをぼくの前に差し出す。
「え?・・・どこ?」ぼくは佳子のノートに目を向け聞き返すと
「ここなんだけど・・・これで合っている・・・よね?」自信なさそうにボソボソ言いぼくの事を上目使いに見つめてくる。
「え・・と・・・ここはこの前の問題の応用なんだから・・・」そう言いながら佳子の書いた横に書き出すと
「あ、和美!佳子ばっかり贔屓だぁ!!!!」と、亜紀がそんな事を言いながら自分のノートをぼくの前にずいっと突き出してくる。
「ちょっとぉ!今はあたしの見てるんだから亜紀は待っててよ」佳子は顔を上げそう言って亜紀を睨みながら文句を言う。
「なにさ、さっきから佳子のばっかり見てるじゃないのよ!・・・ずるいぞ!!!」
「ず、ずるい?・・・あたしは和美に教えてもらっているだけでしょうが?」
「だってさっきから佳子のばっかりじゃない!・・・それがずるいって言うのよ!」亜紀はそう言うと今度はぼくに目を向けてくる。
「和美だって・・・ずるいぞ」
「ず、ずるいとかじゃ・・・無いと思うんだけど・・・」亜紀の言葉になにも言い返せないぼく(笑)
「亜紀ももっと聞いてくれて良いんだから・・・」
「じゃあ・・・ハイ♪」亜紀はそう言ってぼくの前にノートを差し出し
「こことここなの・・・やってはみたんだけどさ・・・」
「あたしが先だってば」佳子はそう言って自分ののノートを亜紀の上に重ねる!
「佳子なんて1つだけじゃない・・・あたしは2つ判らないの!」
「あ・・あたしはこことここもなの!・・・だからあたしのほうが多いのよ!」
「あ・・・さっきまでそんなの無かったじゃ無いずるいぞ!」
「ずるくない!!!」そう言って亜紀を睨みつける佳子。
「「うぅぅ〜〜〜〜んん」」両者譲らずずっと睨んでいてただぼくははらはらするだけだった。
「だ・・・大丈夫かな?」そう志乃に言葉を向けるとなにも言わないままで笑みを浮かべ参考書を解いている彼女。
「だ・・・大丈夫かなぁ?」そんな余裕な志乃に返って気になりもう一度聞き返すと
「大丈夫よ・・・だって・・・」志乃はそう言って顔を上げ二人を見て微笑んだ。
余りの突然な行動につられて二人に目を向けると
ゴイン!!!
と、響く音がして二人が頭を抱え込んだしまったではないか!
「え!」突然の事に驚いていると二人の影からゆらりと人が出てきて「まったく・・・判らない事を自慢するんじゃないの!」と呟き、もう一発(笑)
「「あうぅぅぅ〜〜〜〜」」
「まったく・・・情けないとかいうレベルじゃないわね・・・」そうため息をつきながら持っていたお盆からお茶とお菓子を置いていく(爆)
「あ、ありがとうございます」
「いいえ、これくらいは当たり前ですよ」そう言いながら佳子を一睨みしてまた来た時と同じように音を立てないで出ていく。
「あはは・・お母さんが・・・そゆことなんだね・・・(汗)」そう言って苦笑いしているぼくに志乃は静かに頷く。
「まぁね・・・だから気にしなくても良いんだからさ」
「え、えと・・・するとまさか?」あたふたしているぼくに笑みを浮かべ、”いつものこと、気にする必要無いよ”とばかりに、志乃はまた参考書に目を向けた。
「ふぃ〜・・・勉強したぁ〜♪」佳子はそう言いながらシャープペンシルを投げ出すとごろんと横になる。
「お疲れ様・・・って言いたいけどね、予定していたとこまで終わらなかったんだからね」ぼくはバッグに参考書を入れながら佳子に言い返す!
「もう!・・・これ以上は無理だって!」
「そうよ!・・・これ以上勉強なんて無理だわよ!」亜紀と佳子は声をそろえ言い返してくるではないか。
「でもさ・・・あと10・・・5ページくらいは終わらせておかないと・・・明日もっと大変になるんだよ?」ぼくがそう言うと佳子はゆったりと体を起こしぼくを見つめた。
「あたしね・・・大学行くの止めようと思うんだ」
「え?」突然の佳子の言葉にぼくは追』佳子を見つめ返していた!
「だって大学に行ってもさ・・・勉強ずっとするわけでしょ?・・・そんなの無理だわよ」手を広げさも当然とばかりに佳子は答える。
「で・・でもさ・・・」
「まぁ和美がずっとあたしと同じ所にいてず〜〜〜〜〜と勉強見てくれて宿題とかも見てくれれば別かも知れないけどね」
「そ・・・それは・・・」佳子にそう言われつい答えに困っていると佳子はクスクスと笑い始めた。
「まぁ・・・それ以前にあたしは和美と同じとこなんてまず無理だからさ」
「そうだね・・・絶対に無理よね」と志乃が相槌を打つ(笑)
「佳子と和美じゃ・・・有名国立と地方無名私学くらいな差があるわけだし・・・」亜紀が両手を広げふぅとため息をつく。
「・・・まぁそういう(現実な)わけだし・・・」佳子はすこしむっとしたものの、事実であるのだから志乃に反論なんてできるはずが無く、そう呟いた。
「和美があたし達のレベルに合わせる事はできるけどさ・・・まぁ廻りが許さないでしょうけど・・・」
「?」不意な志乃の言葉に一瞬理解に苦しむぼく。
「だってさ、佐藤君と和美は・・・いうなれば国立だって十分なレベルじゃない?」その言葉に佳子と亜紀がうなずく。
「学年主任だってさ・・・ウチの高校からあそこに入るのを期待しているはずだしさ」
「そ、そんな事無いって!・・・佐藤君はともかくぼくなんてそんなんじゃないって!」
「「「?」」」
「そ、それに・・・大学・・・は・・・」
「おや?・・・大学なんて行きたくないとか・・・」
「そんな事お姉さんが許しませんことよ(笑)」
「そ、そうじゃなくて・・・」
「はぁん!・・・それとももう結婚とか意識してるのかなぁ♪」
「あぁなるほどねぇ・・・そっか・・・そういうことじゃあねぇ♪・・・」佳子と亜紀がじろじろぼくの事を見つめ、ウンウンを首を振り納得の笑顔を見せた。
「なんで・・・納得するのかな?」
「だ〜ってさ・・・ねぇ?」亜紀が志乃を見つめニヤニヤしている。
「将来安泰だもんねぇ♪」と志乃!
「だからなんなんだよぉ!!!」佳子の家にぼくの声が響いたのであった(合掌)
「は〜い、そこまでね!」
先生の声にぼくはシャープペンシルを置いて小さく伸びをした。
「和美・・・ホイ」後から答案用紙が送られてきて、自分の分を乗せ前の席に向って差し出し
「佳子・・・答案前にだして・・・」と声を掛けたが動きが無い。
「佳子?・・・佳子・・・前に・・・・」もう一度声を掛けながら軽く答案用紙で肩を叩いても反応がまったく!無い!
「佳子?・・・どし・・たの・・」余りの様子に立ちあがって前を見るとシャープペンシルを持ったままの姿勢でいるではないか!
「・・・佳子・・・」ぼくは心配になって手を伸ばしていくと、脇から手を捕まれてしまった。
不意の事に目を向けると志乃がぼくに向い首を振っているではないか!
「志乃?」
「無駄よ和美・・・佳子は・・・佳子はね・・・」そう言って小さく息を吐くと
「燃え尽きたのよ」と呟いた。
「え?・・・燃え尽きた・・・の?」
「そうよ・・・彼女と一緒に・・・」そう言って亜紀を指差す志乃。
「えぇ?」志乃の指差すままに目を向けるとまったく同じ状態のままの亜紀が佇んでいる。
「あ・・・亜紀?・・・」
「言葉は無用よ和美」志乃はそう言い再度首を振る。
「戦士に訪れた休息なんだからね♪」
「あ・・・あはははは・・・」志乃の言葉の意味を理解したぼくはただ力無く笑うだけだった・・・
「勉強なんて嫌いだぁ!」帰り道、マ○クに寄ってそんな愚痴をこぼす佳子。
「まぁ・・・好きな人なんていないと思うけど・・・」ぼくが佳子を慰めようとそう言うと、ジロっと佳子が睨んでくるではないか!
「な、なに?」
「はぁ・・・厭味にしか聞こえないんだって・・・和美が言うとさ・・・」志乃はジュースを口にしながらそう呟く。
「え?・・・ぼくだってそう好きとかじゃあないよ?」
「出来るから・・・言えるのよ!」
「あのテストが戻ってくる日までにおびえる毎日なんて判らないでしょう!」
「そして・・・成績表を学校から家まで持ち帰る・・・あの恐ろしい時もよ!」亜紀と佳子の真剣な目にぼくはなにも言い返せない。
「亜紀ちゃん・・・貴女だけねあたしの気持ち判ってくれるのは・・・」
「そうよ佳子・・・そして貴女だけだわ、あたしの気持ちを判ってくれるのも・・・」
「「そんなあたし達の気持ち!和美には判らないでしょう!」」
「うぅぅぅぅ・・・」二人にそう言われなにも言い返せないぼくは、視線を二人から逸らしてしまった。
「はぁそんな事気にする必要無いわよ和美・・・貴女のせいじゃないでしょ?」そんなぼくに志乃はポテトをつまみながらそう笑った。
「で、でもさ・・・二人の言うのも・・・」
「勉強”出来ない”んじゃなくて、”しない”のは和美のせいじゃないでしょ?」
「「・・・」」志乃に言われ二人が凍りつく(笑)
「あれだけ和美が来てくれたのに・・・自分からしてないんでしょう?」
「「あぅぅぅぅぅ」」
「2年の冬はともかく・・・3学期は誰のおかげで春休みがあったのか忘れたわけかな?」志乃の言葉にどんどん小さくなる二人(笑)
「和美がいなかったら冬の二の舞かいえ最下位1・2だったかのしれないでしょうが!!!」
志乃の言葉に二人は小さくなり・・・見えなくなった(嘘)
「まあ終わった事にはあまり気にしないでいたほうが」マ○クから出てぼくはそう言って慰め続けていた。
「そうそう、最後の夏休みなんだし」志乃も(良く判らないけど)慰めている。
「「その夏休みが”あれば”良いけどねぇ」」そんなぼく達の言葉は聞き流されているのか、どんよりしたままで二人はテクテク歩いていくのだ。
「そ、そんな事って・・・」
「たぶん、あたしは隔離されて勉強の日を送るんだわ!」急に佳子は立ち止まると振りかえりゆっくりと微笑んだ。
「・・・佳子・・・目が・・・」”紅い・・”と言いかけ、その微笑みに言葉を封じられたぼく。
まるで”全てが終わり諦めた”といわんばかりの穏やかな・・・いや、穏やか過ぎる笑顔であったからだ。
「あたしのカレンダーにも”夏休み”なんて日はもう」と同じ表情で振りかえる亜紀。
「佳子・・・亜紀・・・」
「あたし達の事・・・”きれいなままで”覚えていてね和美」
「え・・・ちょっとそれって」
「夏休みあとは・・・もう・・・」
力無く呟く二人・・・きっと今が一番だと言いたいのだろう、精一杯の笑顔をぼくに向けている。
「まだ・・・諦めるのは早いよ」
「「え?」」ぼくの言葉に二人は驚いたらしくじっと見つめてくる。
「ぼくが付いているから・・・夏休み中は一緒に勉強するから・・・」
「「・・・良いの?・・・」」
「うん・・・だからそんなに落ち込まないで・・・」
「「で、でも・・・お母さんはきっと・・」」
「ちゃんと言うから・・・夏休み中は頑張るからって」
「「ホントに?」」
疑っている二人は顔を背けたままそう呟いている。
「うん、約束するよ」
「「ふぅ〜とりあえず一安心だねぇ〜〜」」
そう言って顔を向けた二人は違う笑顔に変わっていた(爆)
「まぁ〜〜ったく、和美も甘いなぁ」志乃がため息をつきながら苦笑いしている。
「え?・・・じゃあ・・・もしかして・・・」志乃の言葉に、亜紀と佳子の顔にぼくはやっと気付いた。
「約束破らないよね和美はさ♪」
「うぐ」見つめながらそう言う佳子にぼくはなにも言えない。
「じゃあ最終日にお母さんに会ってくださいね♪」亜紀はそう言ってぼくの手を握りぶんぶん振っている!
「約束だからねぇ」
「う、うん」そんな二人に言われぼくはただ頷いた。
だけどこの時二人・・・いや四人は気付いていなかったのだ。
テスト前勉強ですら付いてこれなかった(二人の実力な)のに、”母親”が納得できる勉強量について行けるのかと言う事実に(合掌)
33話へ続く
最初にお詫びです。実は、この32話は1ヶ月以上(実際は2ヶ月近く)前にいただいておきながら、忙しさにかまけて放置しておりました(爆)。
さらに、その間にあと2話分いただいております。
そういうわけで、なんとか7月中に32話をアップし、できれば8月中にもう2話アップしたいと思いますので、どうかお許し下さい…。
それにしても、試験勉強。はるか昔の想い出になってしまってますが、やっぱあれだけは好きにはなれませんねぇ。
さて、次回彼女たちはどうなる・・・?
2006.07.30 mk8426