和美ちゃんスクールライフ

和美ちゃん 31話

作:kagerou6

 

 

「しっかし・・・あそこまでするかなぁ・・・」佳子は野菜を洗い、ざるにのせて水を切りながらそう言うと、壁際にいる少女に目を向けた。
「”愛しの佳子様”のためだもん・・・あれくらい当たり前なんじゃないの♪」ため息を付く佳子の隣であきがそう茶々を入れた。
「だぁ〜〜それはシャレになんないって言ってるでしょ!」
「でもさぁ、そんな事でもないとあそこまでしないよ?」”どうどう”と佳子をなだめながら言い返す亜紀。
「あたし、そっちの趣味無いんだけどなぁ・・・」佳子はそう言って壁際の少女・・・山瀬美優に目を向けた。

今朝、佳子にくっついて離れなかった彼女は校門を入ってきた晶に説得されとりあえずは佳子から手を離した。
「貴女の学校はどうしたんですか?」時計を確認しながら晶が彼女に聞くと
「私は”生徒会”の仕事で来ているのですから心配ありませんわ」とあっさり彼女は答えると持っていた鞄から封筒を取り出した。
「”生徒会”会報誌での取材ですから」
「「「は?」」」封筒を差し出された晶はもちろんぼく達も顔に”0”が三つ並んでしまった。
「そういう訳ですから・・・宜しくお願いします♪」そう言うとまた佳子に抱き付いた(笑)
そしてそのままぼく達の後について授業を見つづけているのだ(爆)

「しかし、気にしてると失敗するから・・・無視するしかないよね」ぼくがそう言うと志乃は頷いて答えた。
「それに彼女の目的は佳子だから・・・あたし達が気にしても仕方ないもんね」
「そうそう・・・ぼく達はのんびり作りましょう」ぼくはそう答え冷蔵庫を開けた。
「・・・えっと、バターと塩と卵と・・・」ぼくは使う材料を取りだし並べていくと他のテーブルではもう調理の始まっているところがあるようで、包丁の音やフライパンで焼く音などが聞こえてくる。

トトトトトトトトト
ジュージュー
コトコト
グツグツ

女子高生40名の軽快なリズムと一緒に良い匂いが調理室を充満していく(笑)
どこぞの人が見たら垂涎ものなのではあるけど、当人達にとってはただの授業であり”戦い”の場でしかない(爆)
「きゃー焦げた!」「あ、しょっぱい!」時折お約束な言葉が響き、廻りの笑い声が添えられていく♪
「良く出来ているようね」「もうちょっと・・・揃っていると良いわねぇ」時折テーブルを見て声を掛ける先生の言葉に一喜一憂していく。
「つけ合わせはこれで良いかな?・・・あとはいよいよ焼くだけだね♪」
「おや?和美ちゃん・・・随分ゆっくりだねぇ♪」”同じような”ペースの亜紀がそう言って笑っている。
「いえいえ・・・亜紀さんほどでは・・・」と笑って答えるぼく。
「焼きたてを狙っているのね・・・”時間”があるのかしらねぇ?」
「まぁ十分ですよ・・・それよりも亜紀さん・・・」ぼくは亜紀のお皿を見ながら
「付け合せのブロッコリー・・・随分水が出ているようで、それで良いんですか?」と言うと、顔をしかめる亜紀。
「お気遣い感謝しますが・・・和美さんだってにんじんが崩れてましてよ?」その言葉に慌ててお皿に目を落とすぼく。
「「ふふふふふふふ・・・」」火花が飛びあう和美と亜紀の会話ではありながら廻りの娘達はちっとも慌てていない。
「またやっている(笑)」「まぁ亜紀にとっては和美に勝てる唯一の・・・だしね♪」などの声が流れてくるほどなのだから(笑)
だがそんなほのぼのとした調理室とは正反対に、重く暗い空気の満ちている部屋がある事を和美はまだ知らないでいた・・・

「しかし・・・信じられませんなぁ」校長は話を聞いてフっと息を吐き口元を歪めると、もう一度相手に目を向けた。
紺色のスーツに髪をアップにしている”女性”は時折眼鏡を指でツンツンいじって持っている紙に目を落としている。
逆三角形な眼鏡の奥にはその眼鏡に負けないきっつーい!目が収まっていて、化粧のせいか、誰にも否定させない、そんな雰囲気を醸し出している!
「しかし、事実ざます!(笑)」相手は紙から目を向けると、目じりを40度を越しそうな感じで吊り上げ!・・・今時いないかなぁ・・・という口調で反論し、校長の態度を嘲りと取ったのか、壁を貫かんばかりに睨みつける!
「ウチの生徒がざます!・・・土曜日以来まともな食事が出来ないんざますよ!!!(怒)」完全にヒスな口調と共に段々と顔を紅潮させていく相手に身の危険を感じる校長(爆)
「・・・そちらの話は伺いました・・・当事者を呼んで再度確認しましょう・・・」慌ててそう呟くとインターホンを使い教頭を呼び、和美達をここに来るように指示を出すと手を組んだ。
・・・はぁ、いったい何をしたんだ和美・・・相手に気付かれない程度にため息を吐いた。

「もう・・・細かい事言いあっても意味ないでしょう?」佳子がそう言いながらため息をついてぼくと亜紀のを見つめている。
「キレイに出来てるじゃん?」
「そう言う問題じゃないの!」亜紀はそう言うと佳子を見つめ返す。
「まぁ気持ちは判るけど・・・でもねぇ?」そう言って出来あがった”自分のもの”をぼくと亜紀の間のテーブルにおいて笑顔を浮かべた。
お皿の上には、赤と黄色と緑がバランスされ何一つ問題の無い”オムレツ”がそこに存在しているではないか!
佳子の行なった事・・・それは”これと比べてどうなの♪”と言わんばかりの行為なのだ(笑)
「なんか・・・厭味なくらい完璧だねぇ」それを見てつい言ってしまうぼく。
「ホント・・・たまには失敗してみなさいよまったく・・・」ぼくの声に志乃もぼそぼそと佳子に向って呟く。
「さぁ・・・後は・・・」佳子は笑みを浮かべ亜紀に目を向けてると笑顔を浮かべ”早く言いなさい”と催促をしている。
「はいはい・・・佳子さんには敵いませんよ」亜紀が残念そうに待ち望んでいる言葉を口にすると佳子は大きく頷いた。
「ホント・・・凄い出来よね♪」後から声がすると手が伸びてきて付け合せの野菜を摘んでいく(笑)
「「「え?」」」驚いて振り向くと美優がそれを食べているではないか!
「アンタねぇ!」佳子はさすがに怒っているのだが彼女はすこしも気にしていない様子で笑顔を向けている。
「あーやだやだ・・・佳子さんたら”ラブラブ”じゃないよぉ♪」亜紀がそう言って佳子の眉が釣りあがった時、調理室のドアが大きな音と共に開けられた!

「・・・はぁ、お話は判りました・・・」ぼくは呼びに来た教頭先生から話を聞いて腕を組んで目を閉じた。
「ふ〜ん、それって”この間”のあれでしょ?」後から話を聞いていた佳子がそう言って隣に並んだ。
「うん、あの時佳子のオムレツ食べた相手がね”食事できなくなっている”とかで校長室に来ているらしいの」
「しっかし、オムレツ食べたからって・・・食事が出来ないなんて変じゃないの?」
「普通はそうなんだよねぇ」
・・・佳子のオムレツ凄いけど、そこまでかなぁ?・・・調理実習の時に佳子の料理を食べているぼく達にとってそれは考え付かない事だったから。
「そうだよ、それこそこっちが”普段どんなの食べてるの”って聞きたいわよ???」
「そう思うでしょ?・・・いくら佳子のが美味しいとはいえ、あまりにおかしいよね?」
そう言いあっていると考えが纏まらなくりまた皆で腕を組み考え込んでしまう始末。
「お腹が空いても食べれないなんて・・・もしかして”食べたくない”のかな?」気になった事を佳子に言うと
「う〜ん、まぁ食事がインスタントばかりとかなら”食べたくない”って気持ちにはなるかもね」」と佳子は真顔でそう言う。
「そっかなぁ?・・・でもさ、そこまで酷い食事ってあるのかなぁ?」
「まぁ、想像もつかないわね」そう呟く亜紀に皆が頷いた。
色々考えている和美達であったが、ただ一人だけ違う考えの娘がいた。
「・・・ま、まさか・・・」彼女・・・山瀬美優は小さく呟くと持っていたノートを握り潰しながら先ほどとは違った暗い表情に変わっていた。

「ふ〜ん・・・貴女達がそうなの・・・」校長室に入ると値踏みするような目でぼく達はじっと見つめられていた。
いや値踏みというよりも蔑んだとでもいうべきか、自分の想像していなかったものに対する拒絶の目と言った方が近いのかもしれない。
亜紀と佳子が(平均よりもかなり)美人な分、余計に美味しいものを作れるとは思っていないのだろう・・・相手はじっと二人を観察するようにしている。
「で・・・”なに”をしたのかしら?」高圧的な態度で亜紀と佳子を見つめる彼女。
「「え?」」突然の事に驚いて見つめ返す二人。
「だから!・・・どんな事をしたのか聞いているのよ!」感情的になって二人を責めたてていく様子はどう見ても教育者には見えない!ただのヒスでしかなかった。
「たかがオムレツであんな事出来るわけ無いですわ!!」
教育者の”ような”格好に戸惑っていた二人も、ここまで感情的になって相手が”普通”でないと気付いたのか、あからさまにため息を付いた。

「何ですかその態度は!」ぼく達の態度が癪に障ったのだろうか、ここがどんな場所だか忘れたのか完全に逆上し睨みつけてくる!
「このような態度の生徒が!・・・それを黙認するなど・・・今度の教育委員会でこの『自分の恥をさらすのですね』報告・・・」感情剥き出しな相手の声とは違う、落ち着いた様子の声で別の言葉が突然重なる。自然と声のする方に体を向けたぼく達が見たものは!
「「「え?」」」相手を見て言葉を無くしたぼく達に彼女・・・調理室にいるはずの美優が微笑んでいる。
「ど、どうして?」言葉を掛けるぼく達を通りすぎると教師の前まで行き、彼女を見つめる。
「先生・・・ここは我が校ではないのですよ?」美優はゆっくりと口を開けて呟くと教師の反応を待つようにして口を閉じる。
「・・・先ほどの話ですと、ここにいらっしゃるという事は・・・もしかしてあの”件”でしょうか?」ゆっくりと言葉を選ぶようにして話を続け、変わらぬ様子で見つめる美優になにも答えない教師。
「その事に付いては総会での判断が出ていて問題は解決しているはずでは?」
「クッ!」唇を噛んで黙り込む相手。
「あれは”学校内部”での問題であり、他の方にお話することではないでしょう?」
美優はきっぱりと言いきると教師はもう無用だといわんばかりにぼく達に体を向け、佳子の手を取ると
「せっかく作ったお料理冷めちゃうでしょう?・・・早く戻りましょう♪」と言い出した。
「お、お前は何てこと言うんだ♪」さっきとは打って変わった緊張のない声に佳子が吹き出して笑い出す。
「まったく・・・この娘は・・・」亜紀と志乃も”ツボ”に入ったのかつられて笑っている。
「フッ!・・・そうだったか・・・」そんなぼく達を見てそう呟くと全てを悟った顔つきに変わり美優を睨み出した!
「おかしいとは思いましたわ・・・ワタクシの部員があんな事になるなんてね・・・」勝ち誇ったかのように呟く教師。
「”あの事件”・・・貴女方が仕組んでいたのですねぇ」そう言って美優を睨みつけていた!

「「「・・・・・・・・・」」」相手の言葉にどう言って良いのか判らずただ見つめるだけのぼく達。
「図星ね!」勝ち誇ってぼく達を見つめる教師。
「あ、あんたねぇ」さすがに佳子も我慢の限界を超えたのか、今にも掴みかかりそうな顔つきに変わっている!
・・・ちょっと拙いよこの雰囲気はぁ・・・竜虎とは言わないけど危険なオーラを纏った二人が睨み合い一触即発な状態なのだ!
「あ、あの・・・」何とか二人を押さえようとして声を掛けると

「「ぐぅ〜〜〜〜」」

と、軽快な音が聞こえた(爆)
「「「あ、あれ?」」」余りにも場違いなその音に周りに目を向けると

「「ぐぅ〜〜〜〜〜〜」」

と、より大きい音が佳子と教師から聞こえてくるではないか!
余りの音の大きさにお腹を押さえ赤くなる二人(笑)
「お腹が空くと怒りやすくなるんだよね」そう言ってぼくが笑いかけると二人はますます赤く変わっていく。
「それじゃあまずはご飯だよね」ぼくはそう言って二人の手を取って笑った。

「亜紀はご飯をよそってね、志乃はスープ温めなおしてね」ぼくは調理室に入るとオムレツを作る準備をしながら声をかける。
「えぇぇ、和美が作るの?」佳子はそう言いながらぼくの事を見ているけど、実際は作る気がないらしくすでにフォークを握り締めて座っていたりする(笑)。
「・・・言葉と態度がまるで違うのはぼくの気のせいかな?・・・」フライパンを振りながら佳子の相手をして、人数分のオムレツをどんどん焼き上げ並べていく。
「付け合せのミドリさん♪・・・ポテッと赤いケチャッププップ〜♪」千枝はぼくからお皿を受け取ると軽くリズムを取りながらオムレツを盛り付け並べていく。
「ご飯とスープと・・・これで良いかな?」亜紀と志乃はテーブルに座っている伯父・教師・美優の分を含めての7つ分のご飯とスープを並べ座る。
「じゃあ食べましょう♪」佳子はぼくが座るとそう言いながらフォークをオムレツに突き刺した(笑)

「ほぉ、和美の料理を初めて食べたけどなかなかだな」伯父はそう言いながらぼくに目を向けた。
「和美はウチのクラスでも三本指に入るくらい料理が上手いんですよ校長」伯父の言葉にそう佳子が答える。
「ほぉ・・・じゃあいつでも嫁に行けるな?」
「お、伯父さん・・・そ、そんな事・・・」
「そうですよ、和美はあたしの次くらいにお料理上手ですからまだまだですよ」亜紀はそう言いながらフォークを口に運ぶ。
「おんやぁ?・・・和美がお嫁に行くのは”間違い無く”亜紀より早いと思うけどぉ?」佳子が亜紀の言葉にそう言い返す。
「どういう意味よ!」
「えぇぇぇ・・・理由聞きたいのぉ♪」そんな事を言いながら食事を進める二人。
「もう・・・静かに食べてよ・・・ってあれ?」ぼくは一人だけフォークを持ったままでいる人に気付いた。
「どうぞ食べてください?」
「ど・・・どうして・・・」ちょっと声が震えていて、戸惑っているのが良く判る。
「ワ、ワタクシは・・・このような事では・・・」話を続けようとする教師をぼくは止めた。
「今はそういう事忘れてくださいね?」
「食事は皆でするのが楽しいし美味しいですから」そう言うぼくの言葉に何も言わないでいる。
「もう一度議論しても言い合っても良いですから、今はゆっくりと食べてくださいね」ぼくがそう言うと教師は小さく頷いてオムレツを口に運んだ。

「ふぅご馳走様」佳子はフォークを置くと立ちあがって脇にある棚からいくつかのカップを取り出した。
「あれ?・・・佳子、どうしたの?」
「お茶は紅茶で良いよね?・・・あたしが淹れてあげるから」佳子はそう言ってティーポットに紅茶をいれお湯を注ぐ。
「ダージリンなんだけど良いよね?」佳子はカップに注ぎながらそう言っていると紅茶の香りがふんわりと広がり調理室全体を包んでいく。
「随分良い香りねぇ?」余りの香りの良さに亜紀が驚き佳子に目を向けると
「まぁ、そこそこかな・・・でも、せっかく美味しいの食べたんだしそれに見合うくらいのじゃないとね」ちょっとだけ照れながら答える佳子。
「そこそこだなんて良い香りじゃない・・・これに合うといわれるとちょっと恥ずかしい気が・・・」
「なに言ってんの♪」佳子は笑いながらカップを皆の前に置いて自分の席に座る。
「十分負けてないわよ♪」佳子はカップをぼくの方に向かって持ち上げた。
「そ、そっかなぁ・・・」佳子に誉められてつい小さくなっているぼく。

「う〜ん、佳子の言う通りね・・・どっちも美味しいわ」志乃はカップを持ち上げ香りを堪能しながら感嘆の声を上げた。
「そ、そっかなぁ・・・こんなに美味しい紅茶って飲んだ事無いからなぁぼく・・・勝っているとか思えないし・・・」
「大丈夫だよ和美・・・十分張り合っているって」亜紀はぼくの呟きにそう言うと
「しっかし・・・紅茶まであっさり完璧に淹れるんだねぇ、アンタは!」と、ぼやくように言った。
「こらこら照れるじゃない♪」佳子は亜紀の言葉にそう言い笑顔のままで見つめ返す。
「まぁ唯一の特技だからねぇ・・・ここまで出来ても”まだ”だもんね♪」カップを口にしながら亜紀が言うと一瞬佳子の手が止まった(笑)
「・・・と、特技の”無い”亜紀さんありがとね・・・」佳子は身体の底からそう言い亜紀を睨むと唇をゆがませ威嚇する!
「「オホホホホホ!!!(怒)」」引きつった笑いが二人の口から流れだし睨み合う!
「!?」突然の事に伯父は二人の様子に慌てて立ち上がりぼく達に目を向けてきた。
「・・・まったく素直に美味しいって言えば良いのにさ・・・」落ち着いたままカップから立ち上る香りを楽しんでいる志乃に伯父は更に驚きぼくを見つめる。
「そだね・・・いつもの事ながら凄いよね」全然慌てないぼく達にやっと気付いたのか小さく息を吐いて座る。
「凄いもんだね」伯父は周りがどう思うともあれが二人のコミュニケーションだと気付いたからである。
「・・・あはは、驚いたでしょ?・・・」ぼくが伯父にそう言うとガチャンという音と共に教師が立ちあがった!

「あ・・・どうかしました?」ぼくがそう言うと教師は何も言わずにぼく達を見ていた。
「?」返事が無いのに戸惑っていると、教師は口を拭って後に置いてあった鞄を肩に掛ける。
「あ・・・お口に合わなかったですか?」半分も食べていないのを見てぼくがそう言うとゆっくりと首を振る。
「「「???」」」ますます判らない教師の行動にお互いに見つめあうぼく達。
「お時間を取らせてしまいましたね」そう一言だけ言うとサッと調理室から出て行ってしまった。
「あ・・・ちょっと!」伯父はその”行為”が不安になったのか、座っていた椅子を倒れるほど勢い良く立ちあがると追いかけていく。
「「「な、なんだったのかなあの人って?」」」残されたぼく達はただ居なくなった二人を目で追いながらそう呟いていた。

「・・・良く判らないけど、もう来ないよね?・・・」座ったままでぼくがそう言うと
「あの様子だと・・・帰っては来ないでしょ」と佳子も頷く。
「なにも言わないって事はさ・・・文句が無いって事だもんね」
「そうね・・・これだけのなら誰も文句なんて無いわね・・・」空になったオムレツのお皿を見ながら千枝が呟くと小さくため息を吐いた。
「ちょっと前なら・・・あたしの方がお料理は上だったんだけどなぁ」
「そんな・・・千枝の方が美味しいよ」
「良いのよ慰めてくれなくても・・・あたしはそう思うんだから」
「まったく・・・いつの間に腕上げちゃってさ・・・いつ練習してるのかな?」
「れ、練習って・・・家とかでちょっと手伝うくらいで練習なんて・・・」
「まぁいいか・・・でもこれで和美も佳子と肩を並べたんじゃないのかな」そう言う千枝の言葉と同時にガチャンと大きい音がしてぼく達は振り向いた。
安心していたぼく達を驚かせた音・・・それはフォークを持ったまま震えている美優が出した音だったのだ!
「どうしたの?」突然の事に彼女に声を掛けると彼女はフォークを持ったままでじっとぼくを睨んでいる!
「あ、あの・・・」ちょっと前とは違うその様子にどう声を掛けたら良いのか判らないでいると彼女は椅子を倒しながら立ちあがった!
「あの・・・美優?」彼女の態度に”普通ではない”なにかを感じた佳子が優しく声を掛けるといきなり涙を溜めた。
「「「あ・・・の・・・」」」教師をやり込めた時とは違うその様子に誰もが声を掛けられなくなってただ彼女を見つめることしか出来ないでいる!
・・・貴女・・に・は・勝て・・ない・・のね・・・」彼女は小さな声でそう呟くと教師と同じように出ていった!

 

「美秀ちゃん」ぼくは翌日玄関で美秀ちゃんに声を掛けた。
「昨日美秀ちゃんのお姉さんが忘れてい・・・あれ美秀ちゃんどうかした?」どこと無くよそよそしい美秀ちゃんに気付いてそう聞くと美秀ちゃんは力無く首を振る。
「なら良いんだけど・・・昨日ねお姉さんが忘れ物したのであとで渡しに行くね」
ぼくの言う事になにも答えずにいる美秀ちゃん。
「あと、お姉さんに会ったら皆が心配してたって伝えてね」
「え?」さすがにその言葉には驚いたのか美秀ちゃんはぼくを見つめてきた。
「急に走って出てったからね・・・どうしたのかなって」
「・・・そうですよね、先輩ってそういう方ですよね・・・」ため息を付きながら美秀ちゃんは口を開けた。

「そいじゃあ・・・あの娘ってそんなわけで?」美秀ちゃんが忘れ物を取りに来た際、調理室に居た佳子達に話をした。
「えぇ・・・”ずっと勝てなくてやっとだったのに”とか家に帰ってから・・・」
「はぁ・・・そうだろうね」佳子は腕組をしてぼくを見ると小さくため息を付いた。
「でも和美だよ?・・・勝負を仕掛ける相手が間違っていると思うけどなぁ」
「どういう意味だよ?」
「そのままだって・・・気付いていたって言えるの?・・・」と亜紀がぼくを見ながら呟く。
「そ・・・それは・・・その・・・」
「でしょ?・・・相手が雲みたいなもんだもん・・・勝負とか無意味だってばさ」
「うぅ〜〜〜〜〜」その言葉を聞いて佳子をじっと睨むぼく!
「誉めてんのよ♪」
「それ・・・誉められてる気がしないんだけど?・・・」
「気のせい気のせい♪」亜紀もそう言って笑って肩を叩いた。

「で、今日はどうする?」授業が終わって鞄に教科書をしまいながら佳子に声を掛けるぼく。
「そうね、もうすぐ夏休みだし計画立てないとね」
「え?・・・もう三年だし受験勉強でしょ?」腕を組んで考えながら言うぼく。
「あぁぁぁぁぁ〜〜〜〜それを言うなぁ!」佳子が突然言い出した!
「あ、あたしが予備校なんて行ったら・・・夏休みなんて無くなるじゃんかあぁ〜〜〜!」そう言って上目遣いにぼくの事を見つめる佳子。
「な、なにその目は・・・」
「か、和美ちゅわぁんだけが頼りなんだってばぁ♪」そう言って跪き手を組んでいる佳子!
「あたしの先生して!お願い!!!」
「和美とならお勉強もお遊びも両立できるジャン♪」
「あ、そ、そういう事・・・な、なんだか遊びに力が入っていた気がするけど・・・」そう言うぼくに首を振って笑う佳子。
「あ、佳子ずるっ〜い!!!」亜紀が佳子をぼくの前から引き剥がすと同じ格好で跪く(笑)
「佳子なんか放っておいて良いからさ、あたしをお願いね♪」
「ダメだったら和美はあたしんだ!」佳子がそう言いながら亜紀の肩に手を掛け引き倒そうとするではないか!
「あ、危ないからダメだよ」と、佳子を押さえるぼくに
「あたしより亜紀を選んだぁ(泣)」そう言って涙を浮かべる。
「ち、違うよ・・・危ないでしょあんな事しちゃ・・・」
「亜紀選んだぁ〜〜〜」
「え・・・そ、そんな事は・・・」
「えぐえぐ・・・佳子選ぶのぉ〜〜〜」と、両手で顔を隠して言う亜紀。
「あぁぁもう・・・し〜の〜〜〜」どうして良いのやらと志乃に目を向けるとクスクス笑っている(笑)
「もう!いい加減にしてよね!」
「「かずみちゅわぁ〜〜〜ん!!」」そう言いながらじっと二人はぼくを見つめていた(合掌)

 

32話へ続く


なんか予想以上の展開になっちゃってましたが、どうやら無事に片付いたようでなによりです(え)。
それにしても、本当に仲のいい娘たちですね。次回は夏休みに突入するのかな。でも、その前になにかあるような気もしますがさて・・・。

2005.11.26  mk8426

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