和美ちゃんスクールライフ
和美ちゃん 21話
作:kagerou6
「ねえ和美さん・・・映画とか見る?」春休みになったある日、義姉さんがそう言ってぼくの目の前に数枚のチケットを置いた。
「どうしたのこれ?」チケットを受け取りながら聞き返すと
「新聞屋さんが持って来てくれたの」と、教えてくれた。
「洗剤とか余っているから・・・そう言ったら、話題の映画ですからって・・・」
「でもさ、洗剤とかのが実用的でしょ?・・・映画なんて見たら終りなんだし?」
「それは大丈夫・・・ちゃんと洗剤も貰ってあるから♪」義姉さんはそう言って笑っていた。
「それに休みになって和美さんにいつも子守りしてもらっているでしょ?・・・気分転換に出かけたらと思って?」
「そんな・・・気を使わなくても良いのに・・・」チケットを握りながらぼくはそう呟いていた。
姉の部屋に転がり込んで(笑)、既に一年以上になっていた。
家の事を手伝うって約束だったけど、実際には学校から帰って少しの間子守りをする程度で余り手伝っていなかったりする(爆)
さすがに休日とかは子守りをしているけど、それだって義姉さんの役に立っているとも思えなかった。
だから、あまり気を使われても悪い気がしてならなかったのだ。
でも、義姉さんはそんなぼくの気持ちに気付いたのか首を振っていた。
「良いのよ、どうせもらい物なんだし♪」義姉さんはそう言って笑っている。
「それに、それって貴方くらいの娘に人気のあるものなのよ・・・チェックしておかないと話が合わなくなるわ♪」
「そ、そうかな?」
「そうよ、だから友達と一緒に行ってらっしゃい」義姉さんはそう言うとぼくに電話を差出した。
ぼくはそれから佳子に電話を掛けた。
佳子に義姉からチケットを貰った話をすると、二つ返事で答えが帰ってきた。
「田中君の分もあるんでしょ♪」そう言って彼氏の分までキープしてしまう始末(笑)
「それじゃあ・・・高木君と佐藤君には田中君から連絡して貰ってね」ぼくがそう言うと佳子は笑って返事をしていた。
「なんだよ?」
「和美から佐藤君の名前が出るなんてね♪」
「だだだってさ、佳子は自分の彼だけ連れてくる気なの?」
「そうじゃないけど・・・和美はやっぱり佐藤君とか・・・」
「それじゃあ・・・二人にはちゃんと連絡させてね」ぼくはそう言って電話を切ったのだ。
・・・なんだってそこで佐藤が出てくるんだ?・・・ぼくは佳子の返事にそんな事を考えていた。
「佳子、亜紀待ったぁ?」約束の日、ぼくは駅の階段を降りながら、下にいる二人に話しかけた。
「遅いぞ・・・今日のお茶は和美持ちキマリね♪」
「そうね・・・あたしはイチゴシェイクで良いから♪」亜紀もそう言い笑っている。
「えぇ、なんでさぁ」
「遅れたあんたが悪いのよ」
「それの今日誘ったのだって和美でしょ?」
「そうだけどさぁ」
「「じゃあキマリね♪」」二人はそう言って笑いながら歩き始めていた。
「あ、いたいた♪」佳子は待ち合わせに指定していたのか、駅から直ぐの所の喫茶店前で立っている田中を見つけ、手を振りながら走り出している。
田中も佳子を見つけたのか、同じようにしていた。
「田中君・・・高木君と佐藤君は?」後から歩いていったぼくは田中にそう聞くと
「高木は部活、佐藤は用事とか言ってたよ」と、答えた。
「ホント?・・・佳子とのデート邪魔されたく無かったんじゃないの?」亜紀が笑いながらそう言うと田中は苦笑している。
「デートだったら別なとこに行くさ」
「えぇ〜♪・・・どこにいくのぉ♪」亜紀はそんな風に佳子と田中を見つめている。
「ど、どこだって良いでしょ!」佳子は顔を赤くして怒鳴っていた(爆)
「じ、時間ないわ・・・早く行こう・・・」佳子はそう言ってぼくと亜紀を引っ張っていた。
「それじゃあこれがチケットね」映画館の玄関を入ったところでぼくは三人にチケットを手渡した。
「今入ると中途半端だし、次の上映にしない」亜紀が上映時間を見ながらそう言う。
「そっか、ちょっと時間が合わなかったね」
「まあパンフでも買ってさ・・・すこし時間潰そうよ」館内入り口の所にある売店を指差してそう言うと三人は頷いた。
「しかし・・・高木と佐藤は気の毒だな」田中はそう言ってぼく達三人を見ている。
「なんで?」ぼくがそう聞くと不思議そうな顔で
「だって、新学期からは三年だろう?・・・当然クラス換えがあるだろう?」と、はっきりと訳を言った。
「あ・・・そうだね・・・」田中の言葉に亜紀と佳子は少し暗い表情になってしまう。
ぼくはなんとなく二人の気持ちが判ってしまった。
佳子とか亜紀とかとは一年の途中に転校してきてからずっと同じクラスで、他の人とは二年から一緒になった人が殆どだったけど別れの事を考えると辛い気がしてくる。
この一年間、ウチのクラスは諍いなどとは縁がなく、文化祭をはじめ色々な行事で十分纏まっていた。
留学生のエリーの事だって、誰もが彼女と友達になってエリーが馴染む様にしていたし、最後には空港まで一緒に来て見送っていた程なんだ。
明るい娘、ちょっと神経質な娘・・・いろいろいるけど、誰もがクラスメイトだって誇らしく言える娘ばかりで、それは男子でも変わる事はなかった。
そんな雰囲気のクラスメイトが変わってしまうと考えると、暗い気持ちになってしまうのも判る気がする。
「「「はぁ」」」ぼく達三人は一緒になってため息を付いていた。
「まあ、そんなに暗くなっているとせっかくの映画がつまらなくなるって」田中はそう言い、暗く変わってしまった雰囲気を変えようとしている(笑)
「そうだよ・・・せっかく来てるのに・・・」ぼくも田中に合わせてそう言い、佳子と亜紀の手を握った。
「4月まではクラスメイトだし、クラスが別になっても友達でしょ」
「そ、そうよね・・・まだクラスメイトね」すこし涙ぐんでいる佳子は無理に笑顔を作りながらそう答える。
「うん・・・いつまでも友達だもんね」亜紀もそう言って微笑んでいた。
「じゃあ・・・中行こうっか」ぼくはそう言って二人の手を握った。
映画はTVドラマを再編集したもので、学校でも話題になっているものであった。
薄暗い館内で廻りに目を向けると、学校で見た事のある人が数人いる。
・・・これって結構人気あるんだ・・・そんな事を考えながらぼくは映画に没頭していった。
ガサゴソ
・・・あれ?・・・今のっていったい・・・近くで何かを擦っている音が聞こえてくる。
良く確認しようとすると、何も聞こえてはこない。
・・・気のせいかな?・・・そんな感じがしてまたスクリーンに目を向けると
ガサゴソ
さっきよりはっきりと音が聞こえてきた。
ピタピタ
今度はぼくのお尻に何かが触れている感じがしてきた。
すこし体をずらしてもそんな感じは消えたりしない。
・・・なんだぁ?なにか挟んだかなぁ・・・それを取り除こうと、右手をお尻に廻すと暖かいものが触れた(爆)
「え?」驚いてそれを握り、持ちあげると長い”手”が一緒についてくる!
良く見ると、その先には脂ぎった中年のおっさんが(爆)
・・・これって”手”だよねぇ・・・
・・・これがぼくのお尻に?・・・
・・・って、ちかんなのお!・・・そんな事を考えると、背中に冷たいものが流れていく!
「やだぁ!」ぼくは持っていた手を高く上げた!
「「「どうした(の)」」」廻り中がいきなり立ちあがりぼくの事を見つめてくる!
「あ・・・あれ?」良く見ると廻りで立っているのは全部クラスメイトだったりする(笑)
あまりに異様すぎて、さっきの事を話せなくなっているぼく。
「どうかしたの?」そんなぼくを気遣ってか、佳子が廻りを代表するかのように聞いてくる。
「この・・・変なおじ・・・さんが・・ぼくのお尻に・・・」ぼつりぽつり話すぼくに、廻りに目の色が変わった気がした。
「「「なんだとぉ(怒)!」」」数人がぼくから中年のおっさんを取り上げると睨みつけている。
「「「警察が良いか、病院が良いか(怒)?」」」そう言って残りも動き出している。
「あわわわわわ・・・・」集団に囲まれて怯えているおっさん(爆)
「「「そうか、新聞に載りたいんだな・・・」」」そう言ってそのまま出ていった!
「「「和美大丈夫だった?」」」今度はクラスの女子がぼくにそう聞いてくる。
「あ、あぁ・・・」ぼくは突然の出来事にそう呟くだけだった。
「なんで皆がいるかなぁ?」ぼくは売り場でアイスクリームを買いながら、目の前にいる37名にそんな事を話し掛けた。
彼らはぼくに目が合わないようにして、何も言わないで同じアイスクリームを食べている。
「佳子は?」
「え?・・・なんでだろうねぇ」佳子はぼくに顔を背けながらアイスを食べている。
「・・・ふーん、佳子は知らないのか・・・」
「なによ・・・あたしは皆を呼んだとでも言うの?」
「そうは言わないけどさ・・・偶然ていうにはねぇ?」
「偶然よ偶然!・・・ね、亜紀」佳子は言う事が無くなったのか?亜紀に話を振った。
「そ、そうね・・・偶然よぉ・・・」亜紀は慌てながらそう言って顔を背けている。
「そう?」
「そうよ・・・新聞屋さんだってさ、いろんなとこにチケット渡してるのよ・・・」
「え?」亜紀の話を聞いてぼくは亜紀を見つめた。
「ぼく・・・佳子にチケットは”義姉さん”から貰ったとしか言ってないよ?」
「あ!」亜紀の顔に失敗を自覚したのか暗い縦線が入っていく(爆)
「義姉さんにチケット渡したのって・・・もしかして・・・」
そう聞くぼくの前に37つの手が上がった。
「なんだってこんな事するかなぁ?」
「だって和美・・・これが最後かも知れないでしょ?」千枝はそう言いながらぼくの事を見つめている。
「最後って・・・そんなの・・・」
「せっかく友達になったのに、三年になったら別れちゃうかも知れないじゃない!」
「・・・千枝・・・」
「だけど、貴女って暗いの似合わないし・・・でも、最後に思い出になるような事したくて・・・」うっすら千枝の目には涙が滲んでいた。
「・・・皆、同じ想いなのよ・・・」佳子はそう言いながら千枝の事を抱きしめていた。
「もう、ぼく達ってクラスが変わっただけで終わっちゃう関係なの?」
「「「え?」」」ぼくの言う事に皆が驚き、じっとぼくを見つめている。
「クラスが変わっても、学校卒業しても・・・ずっと変わんないと思っていたんだけどなぁ」
「「「あ!」」」
「そゆこと♪・・・だから、これからも宜しくね♪」ぼくはそう言うと皆が笑っていた。
「しっかし、盛観だね・・・皆が揃うと・・・」映画館から一緒に出てきたクラスメイトにそんな思いでいるぼく。
「何事って思われているんじゃないの?」千枝はそう言って笑っている。
「そだね・・・あと二人がいたら全部だか・・・あれ?」話している途中で、佐藤が目の前を歩いているのに気付いた。
「佐藤君・・・こっちに用事?」ぼくがそう言って話しかけると、振り向いた佐藤は流石に驚いている。
「ちょっと・・・皆で映画などをね・・・」
「ふーん、ウチのクラスって三年になっても上手くやっていけそうだね」佐藤はそう言って笑っている。
「え?・・・それってどう言う事?」佳子が佐藤の言う事が気掛かりになって聞き返している。
「あれ?・・・おかしい事言ったかな?」
「今・・・”三年になっても上手くやっていけそうだね”って・・・・」
「そうよ・・・クラス変えあるんでしょ?」佳子と一緒に千枝もそう言って佐藤を見つめている。
「なんだ・・・知らなかったのか?」
「「「え?」」」佐藤の言い様に皆の目が佐藤に集まる。
「三年は受験とかで色々あるだろう?・・・だから、クラス変えないっていう話じゃないか?」
「「「ホント???」」」
「あぁ・・・まあ、新学期になったら判る事だけどね」佐藤はそう言って角を曲がっていった。
「「「あはははは」」」ぼく達は佐藤の話に笑うことしか出来ないでいた(笑)
22話に続く
どうも、mk8426です。毎度おなじみ「和美ちゃん」です♪
どうやら千枝ちゃん、早合点でクラスメイトを巻き込んでしまったようですな(笑)。まあ、親睦会をやったことにすれば無問題でしょう(何)。
いずれにしてもいいクラスなのは間違いないようですね。
2004.08.11 mk8426