「華代ちゃんシリーズ」


レディースシート

いわきのぞみ(原案:mk8426)

*「華代ちゃん」の公式設定については

http://geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan00.html を参照して下さい


【後編】


最近では珍しい しっとりとした清涼感を伴なった黒髪が美しい。その髪をきっちりとオールバックにひっ詰め、健康色の肌を纏ったさわやかな男性に寄添うのは、20代相応の成熟の中に可憐さの残る女性・・・

誰が見ても理想のカップルに違いなかろう そんな2人はだが、互いに自分の精神(心)の中に住む理想の異性を解放し、理想のセクシャルライフを実現したトランスセクシャリスだった。【男性】の戸籍上の名は[前島ゆかり]、そして男性に寄添う女性の名は[相原文男]。だが2人にとってそんな事は、どうでもよかった。今、この瞬間、両者のメンタルセックスは解放されていたのだから。

 

ボウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ・・・・ボシッボボボホシュ、シシシシシュウウウウウウ

プォフオォォオォォオオオォ・・・・ンブオオォォォォォオオォォォォォブオ、ブオ、ブオ、ブオォォォォォォ

ワックスの利いた上品なサファイアグリーンの車体に真っ白いストライプの7両編成の客車・・・その巨大なSLが吹き上げる排煙と両サイドから沸き立つ蒸気は、神秘の霧となって長い長い航跡を漆黒の夜空に刻み付けていた。そして、その最後尾の展望車に、そのカップルを私達は見る事が出来る。

ボッシュウゥゥゥボウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ・・・・ボシッボボボホシュ、シシシシシュウウウウウウ

密閉式のペアガラスの四方は、まるで高級家具のような彫刻の施されたマホガニーで縁取られ、壁紙も特あつらえの別珍・・・。空調も快適な車内を明るく照らすのは、一粒一粒のガラスにも丁寧な細工が施されホコリひとつないシャンデリア・・・その展望車は美しい曲線を描いた外見と同様、内部の装飾も、これが列車内なのか?と驚く程、凝りに凝った造作だった。

 

「これ、、本当に電車の中なんですか?まるでホテルかどこかのお屋敷みたいね」

「本当だね、しかし凄いな・・民営化されて、列車はこんなに素晴らしい乗り物になったんですね。知りませんでしたよ。このシャンパンもとても美味しいし」

『本当に良い物は時代の流行には無関って事でしょうね。でも気に入って下さって嬉しいですわ。そうそう、これ、お客様の乗車記念にと、コック長からのプレゼントなんですって。ええと・・ヴーヴ=クリコ・・って読むのかしら?』

「ぶほっ!ヴーヴ=クリコですって?!それって銀座じゃ一本25万円以上するシャンパンですよ。どうりで美味しい筈だ」

「あら?文男さん・・そんなお店に行かれてたなんて、あたし初耳よ・・・ふーん・・」

「え?あっ・・・いやその・・ボ・・ボクが行っている訳じゃなくて・・そ・・その取引先の社長さん・・そうさ、あの・・」

「知りません・・・このシャンパンはこちらのお嬢さんと2人で頂戴します。あら?そう言えばまだ お名前を伺ってなかったですね」

『あら、あたしったら・・・うふふ、そう言えばそうですね。失礼しました。わたし・・・』

ぶおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお・・・・・・・・・ぶおおぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

キキキキキキキキ・・・キシュキシュキキキキキキキーーーー
ギッキシュウゥゥゥギリギリギリギュリリリリ
キーーーードグン、ヅッシュヅシュン

(ちっ!なんだって「蘇家屯(そかとん)」なんかに途中停車するのよ。こんな「枯れ果てた菜の花畑のど真ん中の駅」に。こんなの予定には入ってないじゃない・・・)

ダッタンダッタン、ダッタン、タタタタタタンタン・・・タタタタタン

たしかに、いつのまにか最大速力で疾走していた筈の豪華列車にブレーキが かかっていた。

キシューキシュキシュキシューーー
ボッシュウゥゥゥ、、ボッシュ、ボッシュ、
ガッシャン、ガシャンギュシシャン、ガシャンガシュン
ボッシュウゥゥゥ、、ボッシュ、ボッシュ、ボッシュ、ボッシュ、ボッシュ、

ボオウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ

かき鳴らす汽笛が漆黒のベルベットのような夜の闇に散布されて、とけ込んでしまう中、その列車は、車輪とレールに火花を撒き散らしながら、威風堂々とホームに入線していた。

【SOUKATOWNG  STATION】
だがカップルのどちらも その駅名にも地名にも覚えがない。カップルは外の空気を吸おうとしてヨーロッパ式のホームに降りていた。

 

前島ゆかり♂
「ふー空気が爽快ですわね。・・・それにしても ここはいったいどの辺なのかしら?ホームにも私達以外にお客様の姿もないなんて・・・」

相原文男♀
「うん、東京からの時間を考えたら、まだ名古屋辺りだと思うんだけど、第3セクターになってから知らない駅名も増えたもんだよ。しかし、こんな低いホームなんて、まるでヨーロッパかどこかの国みたいだな。駅の柱に使われている古いレールも太いし・・・」

前島ゆかり♂
「ほんとに・・おや?・・・え!?・・こ・・これって・・あなた!」

相原文男♀
「ん?どうしたんだい?そんな古いレールを睨んだりして?」

前島ゆかり♂
「こ・・これ・・このレールマーク・・見てください。レールの断面と満州の ”M”の文字を組み合せたマーク。”M” のナチスドイツを連想させる鳥の翼みたいでしょ。これ・・たしか戦時中の[南満州鉄道]の・・・」

 

たしかにそんな深夜でもないのに、乗降客どころか駅務員の姿も、線路を横切る犬猫などの小動物もいない、それ以外には別段、とりたてて騒ぐ事でもない、摩耗によって廃材となった古レールを廃物利用したホーム屋根の支柱の一本を見た女性は、そこまで言うと絶句してしまった。

 

相原文男♀
「[南満州鉄道]だって?そんな馬鹿な・・このホームだって そんなに古くないじゃないか。それにこっちの柱に使われているレールは英語・・Ю.Р.Д.М.О.社・・・何?・・・南ロシア・ドニエプル製・・・英語じゃないぞ!?こいつは、ロシア語・・・それも大戦中は戦車を作っていてドイツ軍に破壊された製鉄工場の・・・」

前島ゆかり♂
「アナタ、、わたし恐い!ここは一体どこなのかしら?それに この不思議なSL・・[南満州鉄道]って・・まさか・・・・?どうしたのかしら?わたし・・なんだか急に眠く・・・なって・・・」

相原文男♀
「ボ・・ボクもだよ・・まさか・・あのシャンパンに・・・」

崩れるようにホームに倒れ込んで寝てしまった2人を見下ろす、駅の照明に照らし出されたトワイライトブルーの流線形の機関車に牽引された鶯グリーンに白いストライプの客車・・・蒸気の白い湯気をまとってホームにそびえたつ その車両の姿は車体の大きさも さる事ながら、電化された車両の小さな車輪を見慣れた者には動輪の直径すらも驚愕に値していた。

「パシフィック 7」通称「パシナ」・・今では中国国鉄に当時の塗装のままで活躍するのみの筈の機関車・・それに牽引される客車・・・・それは数奇な運命の中で、経営母体の「南満州鉄道」とともに、伝説の中に飲み込まれていった、まさに大陸弾丸特急「あじあ号」の勇姿に間違いなかった。

ボッシュウゥゥゥ・・ボッシュ、ボッシュウゥゥゥ・・ボッシュ、

タンタタタタタタンタン・・・タタタタタン

ブオ、ブオ、ブオ、ブオォォォォォォ
ブオ、ブオオオオォォォォォォ

カンカンカンカンカンカンカンカン
トトントトントトントトントトントトントトントトントトン

 

「ふむう!!ふごっふ」

テケテンテケテンテケテンテケテンテケテン
コンコンコンコンコンコン

 

「んんんん、、ふぅぅふうんん」

ダダダダダダダダダダダダダダダダダ

『お目覚めかしら?磁石の共鳴音が、少しうるさいかも知れないけど何も恐くありませんからね。それがMRIの特徴なんですよ』

 

−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・
<M R I>(magnetic resonance imaging, 磁気共鳴映像診断法)。
強力な磁気を使用して、頭部をどの様な断面でも、横断面だけでなく縦、斜めと自由な角度で脳をまるで鋭利なナイフでサックリと切った様に見みせることができるのが、この『MRI』のポイントだろう。だが、当の患者には上記のようなビル工事現場と村祭りのタイコのような磁気音に驚かされる。

その性能の優劣はマシンに使用される「磁石」の強さで決まると言っても過言ではない。この強さをテスラと言う「磁力単位」で表すのだが、今、この施設で使用されているマシンは、現在日本で市販されている最高級の[1.5テスラ]を上回る[最高15テスラ]という恐るべきパワーで稼動するタイプであった。

結果、これまでの[CT]や[MRI]の様に、【血管造影剤】を動脈に注入使用(これをMRA=MRアンギオと言う)しなくても脳の血管を映し出すことができる事になったのである。
−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・

 

『猿轡が苦しいですか? そんなに暴れなくても何もしませんわ。・・・』

「むぐっ!」「ふうっ・・ふむ!」

『さてと、では説明を続けますね。脳はよくコンピューターに例えられますけど、それは脳に対してあまりにも失礼ですわ。成人の脳神経細胞の数は約140億。そんな脳って軟らかくてデリケートな物なんですよ、中国で、生きた猿の脳味噌の生き作りを食べた事ありませんか?お豆腐みたいな物なんです。
そんな物が そのまま硬い頭蓋骨の中に入っている訳じゃなくって、水の中に浮かんだ お豆腐みたいに脳脊髄液の中に プカプカ浮いているんです。その液体は1日に三回 総入れ替えになって、常に新鮮な状態で脳を守っているんですよ。
さぁ、これで脳の仕組みは解ったですね。それじゃせっかくだからオペの体験をしていただきますね。
おや? そこで何をモタモタしているの。この装置で撮影した、お2人の脳と脳動脈、脳の血管をDSAコンピューターでデジタル化して血管だけを最初に調べる事から、もう[脳移植]の準備は始まっているんですよ』

「・・・・・・」

『ねぇドクター。この2人のクランケの状態はどうかしら?』

主任脳外科Dr
「はぁ、このデーターを見る限りでは、内頚動脈系のA-P viewと(Lateral view、正常のようですね。おい 他の検査結果はどうだ?」

サブスタッフ
「結果出ました。え〜脳梁周囲動脈、前大脳、中大脳、前脈絡動脈、いずれも正常です。つづいて眼動脈、内頚から後大脳動脈、左右内頚動脈をチェック中。投薬によるリバウンドなし」

『すてきっ!バッチリじゃなくって。椎骨左右の動脈系の走行チェックはどうかしら?クモ膜下出血、、脳梗塞の心配は?』

主任脳外科Dr
「テンションチェック確認。レントゲン及びMRIのデーター読み取り完了です。クランケのスクリプトデーター読み上げますか?」

『そうね、お願いするわ。』

主任脳外科Dr
「・・・ 後大脳動脈、上小脳動脈、脳底動脈前下小脳動脈 後下小脳動脈に走行異常ありません。つづいて椎骨動脈脳動脈瘤、頚ならびに脳動脈の各部狭窄なし。クモ膜下出血、脳梗塞の予兆なし」

『解りました。ところで「判定基準」を基にした脳幹誘発反応,脳血流シンチグラフィー、脳血管撮影はこれからかしら?』

主任脳外科Dr
「皮膚への刺激とか瞳孔収縮などは「脳死」患者ではありませんので、あくまで看護スタッフの訓練程度の臨床検査ですが、[毛様脊髄反射][温度試験][眼球頭反射][咽頭反射]いずれも健康です」

「インフォームドコンセントの必要なし。全身麻酔の準備を開始しますか?」

手術室の光景?と言うにはあまりにも奇譚、それは高級な電気椅子とも表現したほうがうってつけだろうか、かろうじてその服装から、あのカップルの男女だと連想出来る2人とも、それぞれの椅子に深く腰掛けさせられ、両手両足は椅子に取り付けられた幅広く丈夫なベルトに固定され、鼻から下には革の口枷がアゴの先までを包むようにしっかりと覆われている。

しかも、それはすべて、あの列車内の一車両をぶち抜いた一室で繰り広げられているのだ。

麻酔から覚めた2人の周囲と両腕やさまざまな部位には、血圧を測るためだろうか、手首の動脈には細い管が入り、首からは、心臓の中まで点滴のチューブが入っている。さらに心電図や脳圧計など2人の体調を監視する為のいろいろな機器コードやパイプが、これでもか という程に突き刺さっていた。

点滴ホルダーからの点滴液の落下はまだ見られない。傍らの白衣の女性が心電図を確認し、血圧を測って2人の状態をチェックしてから、静かに右手を高くあげてスタッフに合図した。

『麻酔を開始します。まず魅力的なオクサマからね。ふふふ』

「ふぐ!はっふうううぅぅ!!!」

『暴れても無駄ですよ。・・・これは順番が逆なんだけど、その猿轡が邪魔だから、鼻の穴から人工呼吸の管を気管まで入れますよ。普通なら完全に意識がなくなってからやるので、患者さんに苦痛はないんですけど 、オクサマが聞き分けないんですから仕方ありませんよね』

「ふくっ・・くっほん・・けほっげほ・・」

『ほらほら。もがいたりするからよ。酸素のマスクを嵌めるから大人しくなさい。顔をあげるのよ。全身麻酔で麻酔薬の点滴を始めると,数十秒で意識がなくなっちゃうから、この人工呼吸器をしないと窒息して死んでしまうけど、それでも良いのかしら?」

「ううううう・・ふぐう!・・くふうぅぅ・・・」

『最初からそうやって大人しくしていれば良いのよ。アナタ達の希望を叶えてあげようってのに。・・・血管からの直接麻酔と同時に、足の付け根から動脈の中を通して脳の血管まで到達させたカテーテルに適量輸血を行います。血流を安定させながら開頭手術を行います。・・・あとはDrにお任せしますわ。わたしはこのトレインが緊急停車した理由を調査してきますから』

マスクを取った白衣の女性・・それはカップルに指定券を譲ってやった あの親切な女性ではないか、しかも、見学するだけだった筈の2人がなぜ?

『わたしよ。早くここを開けてちょうだい。ぐずぐずしていたらスクラップにするわよ』

車内オペルームから出た、くだんの女性がイライラしながら足早に向ったのは、列車最前部の機関車の運転台だった。機密化された機関車の運転台の自動ドアが女性の声帯IDを確認して、ドアを開けた。

パッシュウゥゥゥゥゥ、ガラララララ、

カツコツカツコツカツコツカツコツ
『ふうぅぅ、いったい何だって言うのよ。こんな辺鄙な所でストップさえしなければ、今頃はリザーブしていたクランケの[脳転換手術]のオペをあの2人に見学させて、納得されていたってのに・・これじゃ今月のノルマも達成出来ないじゃないの!』

ピロロロロロ、ピッキュウユュュュュ・・・ピロロロロロ、
ピッキュウユュュュュ・・・ピコピコピコピコピコピコ
チカッ、チカッ、チカッ、チカッ、チカッ・・・ピッピッピッピッ
ピキユュュュュユユ

『このポンコツ!良く聞くんだよ!いいかい!なぜ間違って こんな寂れた【過去】で立ち往生してんのよ。人を舐めるんじゃないわよ!』

≫>≫>≫コトワル!・・OOOO年11月1日・・・[あじあ号]は自カラノ意思ニヨッテ、自カラヲ愛スル者ノ為ニノミ走行スル事ヲ、ココニ宣言スル!我ハすてぃーむろこもーてぃぶノ誇リヲ持ッテ、人々ノ夢ヲ乗セテ永久ニ走ル!≫>≫>≫

ボウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
、、、、ボシッボボボホシュ、シシシシシュウウウウウウ

『な・・なんですって?ワタシに逆らうって言うの?コンピューターの分際で・・・第一なになのよ?その11月1日ってのは?』

{{昭和9年(1934年)11月1日・・・このスーパートレイン[あじあ号]が正式に営業運転を開始した日、つまり このSL君のお誕生日なんですよ。}}

『ぎゃ!・・だ・・誰?誰なの、あんた?、いったいどうやって この運転席に?』

{{こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。
最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。
報酬ですか?いえ、お金は頂いておりません。お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。
さて、今回のお客様は…。}}

『ふ・・ふざけるんじゃないわよ。誰もアンタなんかに何も頼んじゃいないわ。アタシは今月のノルマさえ達成できたらそれで良いの。その為には手段とか後先なんか考えてる暇はないのよ・・・あと1人・・・あと1人[脳転換]のオペをリザーブできたら・・・アンタみたいな小娘、お呼びじゃないわ』

{{あの・・何か勘違いしてらっしゃるみたいですけど、私のお客様はアナタじゃなくって、この[あじあ号]なんですけど・・・それとワタシのCMコメントと良く似たメッセージ使うの、止めてくださいませんか?・・・でも同じセールスレディとしてみたら大変なんでしょうね・・・}}

『そ・・そりゃそうよ・・だから邪魔しないで!!!!』

{{解りました!これも何かのご縁ですから、お手伝いしますね。さあ[あじあ号]さん?・・準備は良いかな?それじゃ私達の夢を乗せて、明日に向って元気よく発車よ。[あじあ21]出発進行おうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!}}

≫>≫>≫リョウカイ!、タービンぱわー175%、OOOO年11月1日・・・本日ヨリ列車名称[あじあ21]ニ変更。さぼ変更完了・・・[あじあ21]は自カラノ意思ニヨッテ、自カラヲ愛シテクレル人々ノ夢ヲ乗セテニ走ル!でーたーいんぷっとON・・・目的地、明日!途中停車駅・随時!≫>≫>≫

ピッキュウユュュュュ・・・ピコピコピコピコピコピコ
チカッ、チカッ、チカッ、チカッ、チカッ・・・ピッピッピッピッ
ピキユュュュュユユ

≫>≫>≫・・・前方軌道ニ一切ノ障害ナシ・・・[あじあ21]明日ニ向ッテ発車セヨ・・・≫>≫>≫

ぶおうううううおうおうおうおうううううぅぅぅぅうううぅぅぅぅぅぅ!!!!
ぼっしゆううぅぅぅぅぅぅううぅぅ、ほじゅぼしゅぼしゅううううう

『ち・・・ちょっと?!な・・なんで?運転管理者は、このアタシなのよ?会社の指示も・・・』

ガッシャアアアァァン、ビイイィィィィィィイイイィィィィィィィィィィ
ボッシュウゥゥゥ、ボッシュ、ボッシュ、

{{お姉様は何の心配もいらないですよ。ご希望は必ず叶えてさしあげますからね。さあ[あじあ21]フルスピートで飛ばしちゃおおおお!!!}}

ブオオオオォォォォオオォォォォォ

ガッシャン、ガシャン、ギュシシャン、ガシャン、ガシュン、ガッシャアアァァン
ボッシュウゥゥゥ、、ボッシュ、ボッシュ、ボッシュ、ボッシュ、ボッシュ、

ブオオオオォォォォオオォォォォォ
カラアァァンンンカラアァァァァンンンカラアァァァァンンンンン 

**********************************************************

主任脳外科Dr
「それじゃオペに入るぞ。いいかね【脳幹部】の機能は維持したまま、他の部分を麻痺させる。今から頭部と周辺の表皮をスケルサイドに添って上下に切開する」

「ふごっ!うっぶうふうう!!ふううう、ふごおう!!」

サブスタッフ
「なんだ、まだ麻酔が効いてないじゃないか。おい!麻酔の投薬量を追加してくれ。出血の対処を行いながら、切除した上部表皮は保存溶液で保管。空気に触れる時間は出来るだけ短くするんだぞ」

「ひぃ、くむううう、ぬふう!ぬふん!!」

空間は、あの列車内の一車両をぶち抜いた一室に戻っている。そこには高級な電気椅子?に深く腰掛けさせられ、両手両足は椅子に取り付けられた幅広く丈夫なベルトに固定され、鼻から下には革の口枷がアゴの先までを包むようにしっかりと覆われている女性が1人。

その女性がもがく度にこれでもか という程に突き刺さってメディカルテープで固定された点滴のチューブや心電図や脳圧計などの機器コードやパイプが、ユラユラと揺れる。1人?・・・はて・・・あの2人はどうなってしまったのだろう?

主任脳外科Dr
「それにしても やかましいクランケだな。まったく、アンタ、自分で希望したんだろうが!、ええと今、カルテを読み上げてやるから良く確認するんだよ。<肉体の若返りを希望・・脳髄だけを保管して、脳死した若い肉体が現れるのを待って移植>と・・・間違いなかろう?」

「・・・!!むむむむううう・・ぬふううう、おふぁあぁぁ。んごっふうう!!」

主任脳外科Dr
「悪かった悪かった。そんなに怒らないで。患者のカルテは秘守義務があるんだったね。すまんすまん。さあ、みんないいか、脳の中心部にある、間脳・中脳・橋脳・延髄を眠らせてしまったら、呼吸、心臓、体温維持が出来なくなって、その瞬間に この[クランケ]の生命はその場で消えちまうんだからな」

麻酔担当医師
「わかりました。Dr、カテーテルの挿入完了しました。造影剤に対するアレルギーの危険なし。脳内血管での血液循環時間を計測します・・麻酔注入開始!」

「おっふうううぅぅ!!!ぬっふううぅぅ!!ぐっくっふうぅぅぅぅ・・・・」

10秒・・・たしかに直接、血管に打ち込まれる麻酔薬の効果は絶大だった。ついさっきまで、あれほど見えない手から逃れようとでもするように椅子の上で暴れていた女性は、ものの10も数えないうちに叫びにならない鳴咽を最後に、軽い寝息をたてていたのだから・・・

麻酔担当医師
「やれやれ、やっと麻酔が効いてくれたようです。・・それにしても、この地区のセールスレディの腕前は大したもんだ。さっきのカップルが、染色体トラブルでオペ中止になったと思ったら、5分もしないうちに こうやって別なクランケをセールスしてくるんだからな・・オンナは凄いですな」

主任脳外科Dr
「たしかにな・・さぁ諸君!頭蓋骨上部の円蓋部を切開する。くれぐれも下部の頭蓋底には注意するんだぞ。複雑な形をしていているからな、前頭葉、側頭葉被膜を傷付けない事はもちろんだが、後頭蓋窩側の小脳と脳幹部を保護する被膜には、さらに細心の注意を払うんだ。髄膜炎と術部への影響を考慮して【γ-ナイフ】を併用する」

サブスタッフ
「脳室内の4部屋に自己反応なし。左右の側脳室、第三脳室、第四脳室と脈絡叢(みゃくらくそう)ともに強制鼓動による血液循環中。以下コンピューター解析情報を音声モニターします」

チチチ・・・・・視床下部、昏睡中・・・ 自律神経反応、低下・・・睡眠覚醒能力ダウン。・・内分泌機能低下・・・脳下垂体でのホルモン産生速度低下・・・チチチチチ

チチチ・・・小脳、海馬  昏睡 ・・四肢の運動能力。いちじるしく低下・・

サブスタッフ
「くも膜下腔から何らかの原因で髄液鼻漏をおこしていますが、脳内の硬膜、軟膜、ともに出血はありません。データークロスします」

チチチ・・・ くも幕から[髄液漏]に伴なった微量の出血はありますが、海綿状血管腫とは関係ありません・・・チチチ。

麻酔担当医師
「くそう・・脳室内の脈絡叢(みゃくらくそう)組織がお疲れらしいな。念の為に[くも膜下腔]に、人工脳脊髄液の注入準備をしておいてくれ」

チチチ・・・【側頭葉】・・・【前頭葉】・・・【頭頂葉】 ともに昏睡・・運動能力神経、異常なし・・・頭蓋内圧・・脳脊髄液10%、血液10%・・構成成分については正常・・頭蓋骨の内圧19mmHg、こちらも正常、頭蓋内圧亢進の兆候なし・・・チチチチ

サブスタッフ
「Dr!脳下垂体に異常反応です!」

主任脳外科Dr
「脳萎縮を確認。・・高密度 性ホルモンならびに甲状腺刺激ホルモンを緊急投与せよ。これは[脳交換オペ]じゃない。この脳の摘出まで持てば良いんだ」

サブスタッフ
「大変です!脳浮腫の兆候が出ました。 脳組織の中に水分が増えた事で、脳が酸素不足になったのが原因だと思います!・・・」

主任脳外科Dr
「ここまで来て[脳の腫れ]症状なのか!くそ、このままじゃ神経細胞の中に水が入り込んでいくか、頭蓋内圧が亢進して命取りになっちまうぞ?」

サブスタッフ
「急性【脳ヘルニア】 の兆候あり!頭蓋骨の中の圧が高まったことで、脳の一部がすき間を通って隣へ偏位しています。きわめて危険な状態です。この状態が永く続くと、脳幹部が傷害されて死に至ります。頭蓋内出血あり、脳浮腫との関連も・・・」

チチチ・・・脳室内出血、脳梁部ならびに第V脳室周辺に出血、大脳半球に小さな脳挫傷が、広範囲に、たくさん出来ています。・・・チチチ

主任脳外科Dr
「よし、海馬からの神経を切断、クランプっ!神経障害を予防する。電極は?内壁被膜の損傷はないな?」

神経科担当Dr
「被膜の損傷は認められませんが、手術の直前から[献体]からのアセチルコリン分泌が急激に減少しています。その為に、脳の[側頭葉]、[側頭葉]からバイパスして送っている電気的信号にも反応がありません」

主任脳外科Dr
「なんだと?どういう事かね?」

神経科担当Dr
「このスペックデーターをご覧ください。この[クランケ]の脳髄信号分析機能の中心である[海馬中枢]からの命令伝達システムに障害が起こってきました」

チチチチチ・・・アラーム!!アラーム!![クランケ]の脳髄が自己マインドコントロールを開始、手術開始と同時に、生理プログラムがアセチルコロンの発生とセロトンの活動と発生を止めるようにセットされた模様・・・チチチチ

チチチチチ・・・・同様に、セロトニン反応なし・・活動の期待できず・・・ギャバの大量発生によって、[海馬中枢]は[脳髄:視床下部]からの命令の分析を中止・・・・チチチチ・・・・・脳波ダウン・・脳死レベル・・・

主任脳外科Dr
「ちくしょう・・原因は何なんだ?」

神経科担当Dr
「この[クランケ]が手術の受け入れを拒否しているとしか 考えられません」

主任脳外科Dr
「そんな馬鹿な・・・」

神経科担当Dr
「ですが・・この[クランケ]の脳髄が最後に、そのように信号を送ったのではないかと・・・」

 

ブオウオウオオォォォォォォォォォォォォオオオオオォォォォオオォォォ

主任脳外科Dr
「なんだ?この列車、オペ中だっていうのに動いているのか、そんな・・?・・おい!?・・そう言えば、担当のセールスレディはどこに行ったんだ?あの2人のクランケも一緒の筈だろう・・・」

サブスタッフ
「恐らく次の獲物でも探しに行ってるんじゃありませんかね?・・・この用紙・・・こいつを見て下さいよ。呆れたもんだ。あのセールスレディ、手回しよく、このクランケから[脳死からの臓器提供]の販売契約までしてますよ。おまけに売買可能な臓器と売り込み先の病院までリストにして・・・」

**********************************************************

「もうアルコールは止めてジュースにしておきましょうね・・お2人とも」

「はい・・でも 華代さん、あれは一体?・・夢にしてはこの手首の・・・・」

{{正直、お2人とも危なかったんですよ。あのセールスレディは妖魔世界から成仏出来ない、節操のない鬼畜霊の化身なんですから}}

「霊?・・ですって!」

{{ええ、例えば電車賃とか出張のホテル代金が、会社負担なのを良い事にして、運賃を餌にして、この列車のグリーンシートで毛布に隠した自分のペニスを女性に握らせたり、ホテルから逃げようとしたメンタルレディを無理矢理、強姦したりする節操なしの不浄霊・・もっとも現世でも、悪い病気の感染不安に さいなまれているかもしれませんけどね。あれはそんな不浄霊の化身なんです}}

「そ・・・そんなコトって・・・・」

{{でも、もうご安心下さいな。それにお2人とも、どんなに病理学が進歩しても、脳交換なんて必要ないってコト、ご存知じゃなかったんですか?・・お2人とも同じ条件をお持ちなのに・・・・}}

「えええ?」
「そ・・それって・・まさか・・・」

{{やっぱりね・・・お2人とも相思相愛なんでしたら、もっと勇気を持たないと。お互いに相手がそれで喜んでくれたら・・って、そればかり。インターセクシャリストのご夫婦なんてステキじゃありませんか}}

「キミも!?」「あなたもなの!?」

{{けして今も、ご不自由ではないでしょうけど、ご希望の性・・間もなくお2人のトコロに届きます。どうぞお幸せに!}}

「え?」「そ・・それって・・・」

{お客様、お待たせしてすみません。ご注文のサンドイッチと、お釣をお持ちしました}

「あ!・・ええ・・こ、ここは?・・この列車って?」

{はぁ?今、お乗りの、この列車は[のぞみOOO号]ですが、それが何か?}

「あら、いいえ?、ごめんなさいね、ちょっとビール飲み過ぎただけなのよ、華代さんサンドイッチ良かったら・・・・あら?華代さん?・・・どこに行っちゃったのかしら・・今まで たしか ここに・・・・い・・痛いっ!・・}

「どうしたんだい?・・お腹の具合でも?」

「解らない・・・だけど、お腹の中から蹴られたみたいで・・・うっぷ、ダメ、このサンドイッチのタマゴ・・・匂いが・・・吐いてしまいそう・・・」

{お客様・・・失礼ですけど、そのお腹のライン、おへその当たり、ちょうど3ヵ月目ぐらい、オメデタなんじゃありませんか?}

その車内販売の女性の微笑み溢れる言葉の中、ホンモノのオトコになった前島ゆかりと、母と言うオンナの勲章を手に入れた相原文男は、お互いの手を堅く握りながらも、溢れ出る歓喜の涙をぬぐおうとは しなかった。

 

シュコーン、シュンシュンシュンシュン
シュン、、シュシャシャシャシャシャシャシャシャ

ボウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
、、、ボウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ

最新型の超特急の走行音と、伝説の弾丸特急の奏でるハーモニーが夜空に響き渡る中、ふと車内販売の女の子がつぶやいた。

{ あら?又、あの最新型のレトロ調展望車だ。・・[あじあ21号]って、今度は、あれに乗務してみたいなぁ}

 

気持ちは解りますけど、ちょっと ご注意下さいね。

{{そんな事、お安い御用ですよ。}}

そう言って[あじあ21号]の硬券の指定券を手にした華代ちゃんが貴女の前に現れるかも知れませんよ。
ほら!もう後ろに・・・

 

<本日の運転 終了>

又のご乗車、お待ちしております。

 

 


というわけで、後編をお届けいたします。ちょっとホラー風味のメディカル作品(?)に仕上がっております。正義の味方、華代ちゃんは無生物の依頼も引き受けるんですねぇ。
みなさま、読後はぜひ感想をお願いしますね。

PS.後編のバージョン違いも戴いております。近日中にアップする予定なので、お楽しみに。

2001.11.13   mk8426

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