春奈のリターンマッチ:第1章
作: しろいるか
前書き
この春奈のリターンマッチは少年少女文庫のギャラリー展示品の藤崎将軍さんのClone Brotherに
因んだ二次創作品です。
朝倉由紀夫は妹の妹の夏海と兄妹として生まれて来た。
活発でスポーツ万能な兄・由紀夫。 そして、妹の夏海はさわやかで真面目な性格をしている。
成績は由紀夫がひどい状態なのに夏海は学年でもトップクラスを保っていた。
スポーツ好きの兄・優等生の妹、そして夏海は由紀夫に甘えて由紀夫も夏海を庇って来た。
兄妹として周りの人々が微笑ましく思うくらいに仲がよかった。
このような2人の関係が崩れるような事が高校1年の夏に起こった。
それは由紀夫がバイトで溜めたお金で両親に内緒でバイクを買ったことによって引き起こされた。
「あっ、お兄ちゃん!そのバイクどうしたの?。」
「見つかってしまったか。 バイトで買ったんだ!パパとママには黙っていてくれよ。」
「ダメよ!あたし言いつけるからね。」
「そんなこと言わないでお願いだから黙っていて。 今度、何か奢るから頼むよ!。」
「しょうがないなぁ〜今度だけよ。 でも、約束は守ってよね。」
「ありがとう。 やっぱり双子の兄妹だな。」
本当はパパとママに言いつけたかったんだけど、そうしたら必ずバイクは取り上げられる。
夏海はがっかりした由紀夫の顔を見たくなかった。
でも、それは間違いだったと思い知らさせる事となった。
雨の日に由紀夫はバイクを走らせていた。
「遅くなった、早く帰らないと。」 由紀夫は少しあせっていた。
今日はママの恵子の誕生日で懐にはプレゼントがある。 ママは美人で憧れでもある。
かなりスピードを出して走っていると急に路地から猫が飛び出してきた。
猫は避けたものの続いて少女が飛び出してきた。 猫を追いかけて来たのだろうか?。
慌ててハンドルを切ったがタイヤがスリップして右側のコンクリートの壁に叩きつけられた。
地面に投げ出されて何回もゴロゴロと回りながら電柱にぶつかって止まった。 そして意識を失った。
「う〜ん。」 由紀夫は寝ぼけ眼でゆっくり目を開けた。 視点が定まらないでぼやけている。
人が3人いるみたいだ。 輪郭だけが見えている。
しばらく見つめるとぼんやり色が浮き上がって少しずつ見えて来た。
「見えた!。」 パパと雅昭とママの恵子、そして夏海もいる。
「由紀夫!気が付いたか。」 雅昭が呼びかけた。
周りを見回すと白い壁が見える。 病院の病室にいるみたいだ。
「僕、助かったの?。」
「いや、おまえの体はもうない。 事故でバラバラになったんだ。」
「えぇ〜、それじゃ〜この体は誰のなの?。」
起き上がって見てみると手は細く小さくなって、艶やかな髪が長く伸びて背中までかかっている。
胸に違和感を感じて触って見ると大きなふくらみが2つもある。
「なんだぁ〜!!これは?女の子みたいな胸になっているぅ〜。」
そして、今度は自分の発した声に驚く。 甲高く透き通った綺麗な声に小首を傾けた。
「あっ!女声になっている。 でも、この声ってどこかで聞いたことがあるなぁ?。」 しばらく考えてみた。
「夏海の声だ!でもなんで僕の声が夏海になってるんだぁ〜。」
由紀夫が自分の体の異変に気づいてパニくっているとパパが話し始めた。
「由紀夫気持ちを落ち着けて聞いてくれ。 おまえが内緒で買ったバイクで事故を起こしたのはわかってるな。」
「はい、投げ出されて気を失った所までは覚えています。」 頷きながら答えた。
「よし、ではその後だ!おまえは救急車で病院に運ばれたけど手の施しようがなかった。
特に手と足は粉砕骨折の状態で背骨も肋骨も折れていた。 だがそれだけならまだ救いはあった。
致命的だったのは内臓もいたる所が破裂していて、大丈夫なのはヘルメットに包まれていた頭だけだった。
それで、とりあえず特殊なリカバリー装置に入れて仮死状態にして替わりの体を探す事にした。」
「では、この体は誰のですか?。」
「それは夏海の体だ!。」
「でも、夏海はそこにいるよ。」
ママの側でニッコリ笑ってこちらを見ている。
「由紀夫、どうしょうもないおまえを助けるために新しく開発された医療技術が使われた。 それはクローン技術だ。
夏海のDNA細胞を取り出して特殊な装置で加速培養して、夏海にまったく瓜2つの体を作り上げた。
それしかおまえを救う手立てがなかった。 だがそれもおまえが私達に隠してバイクを買ったために起きた事だよ。
これからは女の子として生活しなければいけないから夏海に色々と教えて貰うんだな。」
「でも、なんで夏海にしたの?男の子の体には出来なかったの?。」
「技術が確定されてないから若い細胞で無いとダメなんだ。
そしてまだ未知の領域があって男性の細胞を使ってもすべて女性にDNAレベルで細胞が置き換えられてしまう。
江崎教授の話では性プロセスの基本が女性型のために、男性ホルモンを女性ホルモンに
置き換えて認識してしまうので、Y染色体に乗っている男性化の鍵になるHY抗原と言う遺伝子がなくなって、
X染色体としてしか認識しないと言う話だった。
その話を聞いてどんな形でもいい!生きて欲しかった。 たった16才でおまえを喪いたくなかった。
そのためだったら夏海の遺伝子を使って女の子にさせてもいいと思った。 この気持ちだけはわかって欲しい。」
雅昭がすこし涙ぐみながら話すと由紀夫は頷いて聞いた。 パパの気持ちが痛いほど身にしみる。
「すべて、僕のせいだ!起きた事はしかたないなぁ。
いくら泣き言を言ってもいまさら男の子に戻れないしなるようにしかならないや。
まぁ〜いいかぁ!男の子としての時間も今まで経験したことだし女の子になってもいいかも。
でも、女の子ってどんな感じなのかなぁ?うふっ、楽しみだなぁ〜。」
元々能天気な性格をしていて現実を認識してそれを簡単に受け入れてきた。 悩んだ事などなかった。
そのお気軽な性格が今回のような場合には優位に作用して精神的負担を軽くしてくれる。
生真面目な性格だと体の変化に付いて来られず精神にダメージを受けて女の子として順応出来ない。
「パパ!こうなったらまな板の上の鯉だ。 女の子としてやって見ることにするよ。 夏海にも迷惑をかけたな。」
「いいのよ、あたしにも責任があるんだから。 バイクの事をパパとママに言ってなかったからね。」
「由紀夫、それで名前も変えることにしたからね。」 ママの声が聞こえて来る。
「どんな名にしたの?。」
「春奈よ!夏海の夏に対して姉として春の字がふさわしいと思って付けてみたのよ。 気に入ってくれた?。」
「わかったよ!ふぅ〜ん、春奈かぁ〜。」
「お姉ちゃん、ダメよ!わかったわって言わないと。 さあ〜言ってみて。」
「はいはい。 わかったわ、これでいいの?。」
「へぇ〜結構すんなり言えるのね。」 夏海は可笑しそうに笑った。
「これぐらいで戸惑っていたら女の子になれないでしょう。」
「あたし、お兄ちゃんが死んじゃうんじゃないかと思って泣いちゃったんだけど、お姉ちゃんになって帰ってくれて
うれしいの。 双子が1人になるなんて寂しいものよ。」
「夏海ありがとう、心配かけてわるかったね。」 春奈は夏海の気持ちが嬉しかった。
「春奈、大変かもしれないけど頑張るのよ。 夏海に仕草や言葉遣いを教えて貰いなさいね。」
1週間後に春奈は退院した。 夏海が迎えに来てくれた。
「はい、お姉ちゃん着替えよ!。」 夏海は笑ってワンピースとブラジャーを渡した。
「これってどうやって着けるんだ?。」 ブラを手にとって戸惑っていると笑われた。
「しょうがないなぁ、これくらいで戸惑っていると先が思いやられるわ。」
知らないから仕方がない。 夏海に教えられてストラップに腕を通して前屈みになってバストの下からブラを当てて
ホックを留めてストラップを調整した。 結構大きい。 夏海がDカップって言っていた。
「お姉ちゃん、どうだった?。 初ブラの感じは。」
「うん、着ければそれなりにバストがしっかりサポートされていい感じなんだけど、なんか窮屈でしょうがないよ。」
「これからはず〜と着けてないといけないから、慣れないといけないかも。」
「こんなことになるんだったらあんなバイクなんて買うんじゃ〜なかったよ。」
「そんなことを言っても元に戻らないわ。 起きた事を後悔しないのがお姉ちゃんの長所でしょ〜?。」
夏海の言うように今の体は女の子だから慣れないといけない。
体を見回すと肩幅も狭くなってウエストはほっそりしてお尻は肩幅ぐらいに大きくなっている。
腕や足も細くなって手や指も小さくなっている。 体全体が柔らかい脂肪に覆われて筋肉はほとんど見当たらない。
身長も由紀夫だってときは175センチもあったのが160センチぐらいになっている。
15センチも低くなっている。 体重も50kgは無さそうだ。
「もうこんな体では剣道なんて出来ないなぁ。 裕輔はどうしているのかなぁ?。」 幼馴染の顔が脳裏に浮かんだ。
「夏海、どうしてワンピースしかないの?ジーンズでも持って来てくれればよかったのに。」
「ママがダメだって!慣れるまではスカートしか穿かせないって言ってたよ。 スパッツもキュロットも禁止だって。」
「えぇ〜そんなぁ〜!スパッツぐらい穿かせてくれてもいいじゃないの。」
「辛抱して!お姉ちゃんに女の子のお洋服を慣れさせようって言うママの気持ちをわかってあげて。」
「着ればいいんでしょう!着れば。 夏海、これでいい。」 春奈は渋々ワンピースを着た。
「似合っているわよ!まぁ〜元はあたしの体だから似合うのは当然だけどね。
でも、その体っていくらクローン体でも大事に使ってね。」
「わかっているわ。 大事に使わせて貰うからね。」
夏海は不安だった。 由紀夫だった時の態度を考えると不安が頭を掠める。
「大丈夫かしら?。」
でも、それを言っても仕方がない。 由紀夫が死んで一人ぼっちになるのは嫌だった。
性格は直らないかも知れないがママと一緒に女の子として教育すればいい。
「お姉ちゃん覚悟しとくのね!。」 そんな妹の想いも知らずに不遜な事を思っていた。
「ふふっ、いくらそう言って貰ったらもう僕の体だ。 夏海にとやかく言って欲しくないなぁ。
でも、しばらくはおとなしくしていようかなぁ?女の子のことを教えて貰わないといけないもんね。」
「お姉ちゃん、行くよ。」
「は〜い、よろしくね。」 2人は笑いながら病院を後にした。
外に出てまず戸惑った。 ワンピースに風が入り込んでおなかがくすぐったい。
「スカートってこんなに恥ずかしいものなのか?女の子って大変なんだなぁ。」
スカートだと下半身が無防備なような気がして顔が赤くなっていく。
「少しは女の子の大変さがわかった?。」 夏海が振り向きながら笑った。
「うん、結構恥ずかしいな。」
「そうでしょう。 今までと違って今度は見られるほうだから立ち振る舞いに気を付けないといけないかも。」
「そうだね、早く慣れないといけないね。 夏海、色々と教えてよ。」
2人はタクシーに乗って家に帰った。
「ただいま。」 ハイトーンの綺麗な声が響く。 2人の声帯の音質音域が一緒なのでまったく区別がつかない。
部屋に入ったとたん唖然として目を見開いた。 がらりと部屋の様子が変わっていた。
壁はパステルカラーの壁紙、カーテンはピンク、ベットのシーツもピンクになっている。
おまけに熊のぬいぐるみまで置いてある。 そして、今までなかったドレッサーもある。
「何!これって?。」 部屋の中をうろうろしているとママと夏海が入ってきた。
「春奈、気に入ってくれた?可愛いくなったでしょう。」
「冗談じゃないよ!!元の部屋に戻してよぉ〜。」 春奈は抗議したが取り合ってもらえなかった。
「女の子のお部屋ってこんなものよ。 あなたも女の子だよ!夏海、後は任したわよ。」
「大丈夫よ。 ママ後はあたしに任せておいてぇ。」
「頼んだわよ。」 恵子は夏海に任せて部屋から出た行った。
「お姉ちゃん、これからお勉強よ。」 夏海が悪戯っぽく笑っている。
「何するの?。」 不安そうに聞いた。
「まず座ってみて。」 夏海の言葉に従って座るとすぐに厳しい声が飛んできた。
「ダメでしょう!足を開いたままだとショーツが丸見えよ。 常に膝はつけて前屈みにならないでね。
それから座る時にはお尻の下に手を入れて座らないとスカートが皺になっちゃうよ。」
「わかったよ。 これでいい?。」
「やれば出来るじゃないの。 これからもその調子で頑張ってね。」
由紀夫は元々乗りのいい性格をしている。 ある程度覚えればすぐその水に慣れてしまう。
言葉遣いや仕草は夏海のやっていたのを思い出して真似して慣れていけばいい。
後は応用だ!春奈はこの手の感覚を身に付ける器用さは幼い時から持っていた。
そして、それを自覚している。 夏海が出て行ってあとで部屋の中を点検してみた。
完全に女の子のお部屋に変わっている。
クローゼットを開けてみるとスカート・ワンピース・ブラウスが架かっている。 それも半端な数ではない。
頭のイメージでは判っていても実際に着ると思うと結構恥ずかしい。
今度は」引出しを開けてみるとブラジャー・ショーツ・キャミソールなどの色々な色の下着が20組ぐらいあった。
「なんで女の子ってこんなに下着がいるのかなぁ?。」
男の子だった時の持ち物で女性にはガラクタにしか見えなくても、由紀夫にとっては幼い時の記念品として
大切にしてきた物もすべてが捨てられていた。
替わりにドレッサーの上には化粧水や髪飾りなどが置いてあった。
このように男性は理想を追い求めて女性は現実にしか関心がない。 価値観の基準が違う。
もう悩んでもしかたがない。 男の子に戻れない女の子としてしか生活が出来ない。
「こうなったら夏海より可愛い女の子になってやる。」 春奈は決意を固めた。
こうして夏休みもあっと言う間に過ぎ去っていった。 戸籍の性別も女性に変更された。
<戸籍特別措置令の発効。 朝倉由紀夫 男性16歳。
事故による身体の消失及びクローン体への移植を確認した。 染色体レベルも女性である。
よって長男由紀夫の戸籍を抹消して新たに長女春奈に戸籍を付与する。>
春奈は雅昭から渡された戸籍謄本を見て呟いた。
「仕方ないよね。 由紀夫!僕これから春奈になるからね。 永久にグッバイだよ。」
寂しそうに心の中で由紀夫に別れを告げて気持ちに整理をつけた。
今日から2学期だ。 目覚し時計の音で目を覚ましてベットで軽く伸びをする。
シルクのパジャマを脱いでピンクのブラとショーツをつける。 ドレッサーの鏡に姿を写してみた。
「こんな体になっちゃったんだ。 みんなもビックリするだろうな?。」
すっきりした眉に特徴のある大きな目。 鼻は少し高くて鼻筋が通っている。 そして可愛い唇。
体も女の子らしい曲線を描いている。 肩はなで肩で胸は膨らんでウエストはほっそりと引き締まっている。
春奈は壁に架かっている制服を手に取って着替え始めた。
パールホワイトのブラウスを着る。 襟や袖口がラベンダーで彩られている。
袖の所には学校のエンブレムが付いている。 今までのネクタイの替わりにラベンダーのリボンをつける。
スカートはタータンチェックのミニスカートを穿いて、パステルレモンのベストを着る。 靴下は紺のハイソックス。
窓から差し込んだ朝日を浴びて髪が艶やかにキラキラ輝いている。
着替え終わってドレッサーに座って髪を梳かすと、鏡には夏海そっくりの可愛い少女の姿が写る。
この体は夏海のクローン体だ。 でも今は自分の体なんだ。
立ち上がって後ろも鏡に写して可笑しい所がないか点検してみた。
「う〜ん、こうして見ると僕って結構可愛いんだね。」 鏡に向かってウインクをしてみた。
しばらく見回していると急にドアが開いて夏海が入ってきた。
「お姉ちゃん、起きたの?遅れるよ。」
「今、着替えたところだよ。」
「あたしが点検してあげる。」
そう言った夏海の雰囲気が変わっている。 しばらくして髪を切っているのに気づいた。
「どうした?失恋でもしたのか。」
「違うわよ。 お姉ちゃんとあたしは同じ姿なのよ。 みんなが戸惑ったらいけないから髪を切っちゃったの。」
夏海は真面目な性格をしているので春奈のことを色々と気配りをしている。
「夏海にばっかりに苦労をかけちゃって御免な。」
「いいのよ、あたし達これから双子の姉妹だもん。」
「夏海、ありがとう。 これからもよろしく。」
「あっ、もうこんな時間!お姉ちゃん遅れるよ。」 2人はティールブルーのバックを持って学校に急いだ。
久しぶりの登校。 そして、女の子として初めて学校に入った。
1学期までは男の子として通っていた。 過去の出来事がパノラマのように脳裏に浮かんでくる。
休みの間、夏海に女の子の基本をレクチャーして貰った。
後ろから肩をたたかれて肩をビクッとさせて振り向いたら担任の高橋先生が立っていた。
「朝倉、大変だったな。 でも、すっかり女の子になってるじゃないか。」
「あっ、先生!おはようございます。」
「おはようございます。」 夏海も挨拶した。
「おはよう、夏海君も大変だったな。 しかし、こうして見ると姉妹にしか見えないな。」 先生が笑っている。
「でも、よく僕がわかりましたね?。」
「これくらいわからないと先生は出来ないよ。 夏海君そっくりの女の子が二人いるから片方が元男の子の
春奈君だと判断したんだ。 わかったかね。 でも、その体で僕って言うのは少し似合わない気がするな。」
「先生、これからは女の子として生きなければなりません。 ご迷惑をおかけすると思いますがよろしくお願いします。
それと僕もやっとこの体に慣れ始めた所ですし、言葉遣いなんてまだまだですよ。」
「先生、姉の事をよろしくお願いします。」
「わかっているよ、お母さんからも状況の説明を貰っているからね。
これから春奈君としてクラスのみんなに紹介するよ。 朝倉、一緒に来るんだ。」 そして校舎の方に歩いていった。
「はい、よろしくおねがいします。」
「ほんとうに大丈夫かしら?。」 夏海は不安そうに見送って自分も教室に向かって歩き出した。
1年3組の教室に先生がガラガラと戸を開けて入っていった。
「起立、礼、着席。」 委員長の声が響く。
「おはよう、今日から2学期だ!休みの事は忘れて勉強に励んで貰いたい。 そして、みんなに報告することがある。
ここにいる女子は転校生ではない。 実は朝倉由紀夫君が変身した姿なんだ。」
「えぇぇ〜〜!!」 先生の説明にみんな驚いて生徒の中には目を見開いて立ち上がるものもいた。
「うそでしょ〜?。」 「かわいい!」 教室の中は騒然となった。
「みんな静かにして!。 先生のお話はまだ終わってないわ。」 委員長の声がする。
「みんなが驚くのは無理もないが気持ちを落ち着かせて聞いて欲しい。
夏休みに入って間もない頃朝倉はバイクで事故を起こした。 ひどい事故で回復出来ないような損傷を体に受けて
死んでしまう所を新しい医療技術のおかげで再生する事が出来た。
しかしまだ開発途中の技術のためにDNAレベルで女性としてしか再生する事が出来なかった。
先生はクラスのみんなにお願いをする!朝倉春奈君を受け入れて欲しい。
それとこれは特に女子にお願いするが、女の子になって日の浅い彼女に習慣とか言葉遣いを教えて1日も早く
みんなに打ち解けられるように指導してやって欲しい。」 みんなはし〜んとなって話を聞いた。
委員長の岡田麗佳が立ち上がって口を開いた。
「あたしはみんなを代表して朝倉さんの再生と帰還を歓迎します。 みんなもいいわね。」
麗佳の声に答えるようにクラスのみんなが拍手をしてくれた。 春奈は目頭が熱くなって来た。
「ありがとう。 朝倉、一言挨拶をしなさい。」
「皆さんありがとうございます。 事故で体を失って妹のおかげで女の子として再生する事が出来ました。
まだまだ女の子の自覚はないので、皆さんに色々とご迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします。」
クラスのみんなに深々と頭を下げて自分の席についた。 放課後かっての悪友達がやってきた。
「由紀!大変だったな。 でもそれにしても大きな胸だな。」
「そうだな!すっかり女の子の体になっているじゃないか?。」
「おまえ達には関係ないだろう。 向こうに行けよ!」
「そんなことを言うなよ。 この間まで仲間だったじゃ〜ないか。」
春奈は胸をジロジロ見られて全身を嘗め回すように見られた。
女子の制服を着てミニスカートを穿いている自分の姿に恥ずかしくなって次第に赤くなっていった。
「春奈!少しぐらい胸を触らしてくれ。 いいだろう?。」
「スカートの中までみせろとは言わないから頼むよ。」
「そうだ、俺達に少しぐらい夜の・・・をお裾分けしてくれてもいいよなぁ。」
「バカな事を言うんじゃ〜ないよ!そんな事をするといくら幼馴染でも絶交だからな。」
男の子だった時は女の子の体に興味があったが、変身した今は自分の体がオナペットにされるなんて
冗談じゃない思っていると、由紀夫だった頃のガールフレンドの西条友華と山口恵理がやってきた。
「あんた達、何!セクハラしているのよ。 春奈いじめたらあたし達が許さないわよ・・・・・。」
「おまえ達に関係ないだろう!。」
「鬱陶しいなぁ!あっちに行け!。」
「関係ないことはないわ。 いくら元男の子でも今の春奈は女の子よ。 あたし達が庇うのは当然よ。」
「あたし達を怒らせるつもりなの?女の子の結束力を見せてあげようか。」
「何するつもりだ?。」
「あんた達も部活に入ってるわね?。 女子の先輩からあんた達の部活の先輩に言って貰うよ。
男の子って自分のガールフレンドの言う事はよく聞いてくれるの。 先輩達に締め上げて貰うよ。」
「そんな怖い事を言うなよ。 わかったよ!行こうぜ。」 男の子達はぞろぞろと教室から出て行った。
「春奈、しっかりしなさいよ。 あたし達が付いているからね。」
「友華、ありがとう。」 2人をみて安心したのか涙ぐんだ。 なんだか女の子になって涙もろくなった。
「いいわよそんなこと。 由紀夫がいなくなって寂しいけど今度は春奈とお友達になっちゃうからね。」
「あたしだって春奈とお友達になるよ。 春奈、女の子の事をいっぱい教えてあげるね。」
「友華、恵理、よろしくお願いします。」
「待って!そんな堅苦しい挨拶はしなくてもいいのよ。」
「そうよ、でも女の子の生活って結構ハードだから覚悟しといてね。」
「そんなに脅かさないでよ!まだ女の子になりたての初心者なんだよ。」
「でも、そう言うけど女子の制服似合っているよ。 春奈って着こなし上手ね。」
「そうね、でもスカートはもう少し短くした方が可愛いよ。」
「そうかなぁ?友華みたいに短いのはまだ穿けないよ。」
「だからあたし達が教えてあげるって言ってるじゃないの。 こんな事は誰も教えてくれないわよ。」
「春奈も女の子になったんだからそれを楽しもうよ。 女の子って結構いいものよ。」
「はいはい、お手柔らかにね。 でも、夏海が僕のそんな姿を見たら怒るかも。」
「彼女真面目だからね。 でも、春奈が女の子に染まっちゃったら喜んでくれるわ。
あっ、それとね女の子が僕って言っちゃ〜ダメだよ。 あたしって言わないと。」
「えぇ〜!あたしって言うのぉ?。 まだ恥ずかしい〜よ。」
「あら、そんな事言ってもいいのかしら?。 春奈がまだ男の子の言葉使ってますよって先生に言いつけちゃうよ。
あたし達って春奈の教育係よ。」
「勘弁してよぉ〜!。」
「ダメ!春奈今から男の子の言葉禁止だからねぇ。」
「もう!友華ったらぁ、強引なんだからぁ・・・・・。」
「春奈、あたしって可愛いかしらって言ってみてよ。」
「わかったわ!あたしって可愛いかしら。 これでいいの?。」
「やっぱり春奈は女の子の言葉を使っちゃった方が超可愛いよ。」
「うん、帰ったら夏海ちゃんもお姉ちゃん可愛くなったねって喜んでくれるかも。」
「春奈!夏海ちゃんのためにも早く女の子に慣れないといけないわ。」
「そうだね。 あたしが今こうしてここに居られるのも夏海のおかげだもの。」
「さぁ〜帰ろうよ。 途中でお店に寄って色々と教えないといけないから時間はないのよ。」
「わからない事はあたし達に何でも聞いてね。」
「は〜い、よろしくね。」 3人は学校を出て繁華街の雑踏の中に消えて行った。